本研究は日本の都市構造に焦点を当て、日本の建物の火の粉に対する脆弱性を実験的に検討するものである。文献調査の結果を元に火の粉発生装置を用いて実大実験とベンチスケール実験を行い、脆弱性を確認する。本研究は以下の段階に分かれる。 1)文献調査により大規模火災における飛び火の被害、火の粉の発生の様子を確認する。2)文献調査の結果に合わせて火の粉発生装置から発生させる火の粉の大きさを変更(軽く、大きい火の粉)する。3)ベンチスケール実験を可能とする実験装置のセットアップを行う。4)予備実験として文献調査によりこれまでの被害の多い屋根、近年人気のあるウッドデッキ、建物で一番多くの面を占める壁に対して実験を行い、本実験の対象を決定する。5)予備実験の結果を元に実験対象をウッドデッキと決定し、実大実験を実施し、ベンチスケール実験に必要なデータを確認する。6)実大実験結果を模擬できるようなベンチスケール実験をウッドデッキを対象として確立する。 平成26年~27年度の2年間では5)まで終了し、平成28年度で6)を実施した。その結果、実大実験結果を模擬できるベンチスケール実験を確立することが出来た。ベンチスケール実験においてもウッドデッキの着火を確認することが出来たが、風速4m/sの際に実大実験の8m/sの場合と同様の集積が確認できた。着火に必要な火の粉の量に関しては実大実験結果と同様に、ウッドデッキ材の密度と正の関係があることがわかった。今後の検討課題として同様の実験方法が他の建築部位を対象とした実験にも活用できるのか確認することと、風速による影響を考慮する必要があると考えられる。
|