本年度は,小笠原諸島父島において前年度までに調査できなかった地点である小笠原諸島父島の宮之浜海岸,釣浜海岸,屏風谷周辺,二見港周辺の奥村地区,清瀬地区と西町地区において,津波の痕跡調査をおこなった.調査の結果,二見湾周辺と屏風谷周辺では人工改編が激しく,盛り土が施工されているためにハンドオーガによる簡易の調査では津波あるいは台風による堆積物を確認することはできなかった.したがって,今後,より深くに存在する堆積物を確認することができるジオスラーサーによる調査が必要であると思われる.また,宮之浜海岸と釣浜海岸はそもそも礫浜であり,またあまり広くない海岸の周辺には,定常的に堆積物が生成される沼や緩やかな流れの川も確認することができなかったので,そもそも津波や台風による堆積物が生成されない,あるいは生成されてもそれを確認することは非常に困難であると判断された.また,この調査では,1960年チリ津波についての聞き取り調査の報告から二見港周辺における津波到達地点の調査をおこなったが,宅地造成が進んでいるために当時の津波到達点を正確に確認することはできなかった.さらに,この調査では,前年度までにも津波の痕跡調査をおこなった境浦の波食窪において,新たに水成堆積物を含む巨大な土塊を確認することができた.しかしながら,この土塊がどこから来たものであるのかを確認することができなかったので,本格的な調査はせずに,土塊の位置の確認と写真撮影のみをおこなった.
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