研究課題/領域番号 |
26750130
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
奥村 与志弘 京都大学, 地球環境学堂, 助教 (80514124)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 津波 / 鉄筋コンクリート建物 / 杭基礎 / 津波と地盤 / 地盤の液状化 / 津波避難ビル |
研究実績の概要 |
東北地方太平洋沖地震や南海トラフ巨大地震によって生成される巨大津波では,10mを超えるような水位変化に伴い地盤は液状化する.本研究の目的は,津波避難ビルの安全性向上を見据え,津波によって発生する地盤の液状化現象を解明することとその対処方法を提案することである. 平成26年度(1年目)は,津波による地盤の液状化の特徴に関する知見を整理した上で,東北地方太平洋沖地震津波で杭基礎ごと引き抜かれ流出した女川町の鉄筋コンクリート建物(RC建物)の被災事例に着目し,同被害における津波液状化の影響度を分析した.その結果,「建物の被災メカニズム」には,津波氾濫流の水位低下時に生じる地盤の軟化(液状化)よりも,むしろ水位上昇時に生じる地盤の硬化が深く関わっていることが分かってきた. 平成27年度(2年目)は,初年度に注目した転倒建物に加え,周辺に建っていた転倒建物5棟と残存建物7棟にも注目し転倒の原因を分析した.その結果,転倒建物グループは杭基礎による抵抗モーメントを失うと転倒するのに対して,残存建物グループは杭基礎による抵抗モーメントを失っても転倒しないことが分かった.これは(1)高層建物は自らの重みによって津波に抵抗できること,(2)自らの重みだけで津波に抵抗できない低層建物,中層建物は杭による抵抗が機能するかどうかが転倒流出の鍵を握っていること,を意味する.杭による抵抗が機能するためには,杭が折れないことと液状化によって周面摩擦力が失わないことが求められる. これまでの研究により,10mを超える巨大津波の来襲が想定されている地域に建っている低層建物,中層建物は自らの重みだけで津波に抵抗できない可能性があり,津波による地盤の硬化も考慮して,(1)当該地盤の地震動による液状化の可能性と(2)津波水平力による杭の破断の可能性を検討しなければならないことが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画が無理なく遂行できるものであったため.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,当初の計画通りに研究を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は,別のプロジェクトの関係で当該予算を用いた出張ができなかったため,旅費の支出がゼロになった.当初旅費に使用する予定であった予算の一部は調査に必要な物品やデータ購入にあてた.
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次年度使用額の使用計画 |
国際共同研究を進めるための旅費や解析ソフトの購入などとして活用する.
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