本研究では,車載型全周囲カメラ画像を用いた被災地外での津波浸水域の建物被災度判定の方法について研究を実施した.まず,車載型全周囲カメラ画像と空間情報の重合処理による被災度判定の自動化を行うために,2011年東日本大震災の津波域で被災した建物の数百棟の画像を車載型全周囲カメラ画像から切り出しを行い,その画像でディープラーニング手法を用いて建物被災度判定を行った.その結果,建物被害の有無が自動的に判定できることが明らかになった.さらに,地理空間情報から車載型全周囲カメラ画像の建物を切り出す手法を明らかにした. 自動判定結果を自治体等で簡易に閲覧できるようにウェブシステムの開発を行った.このウェブシステムでは,判定結果を閲覧できるだけでなく,自動判定結果の修正や,その修正結果をディープラーニングの教師データとして用いて更なる判定結果の向上を行えるようにした.このウェブシステムにより,被災自治体だけでなく,遠隔地の応援自治体でもシステムから被災度判定することが可能になった.これらの研究により,建物の被災状況をある程度自動的に判別すること可能になるとともに,ウェブシステムによる遠隔地での被災度判定支援が可能になることがわかった.ただし,本研究では,一部損壊や半壊などの被災度区分までの判定まではディープラーニング手法やその他の手法などで試したが難しく,今後の課題と言える.今後,被災度判定結果の向上を行うための更なる手法論の明らかにする予定である.
|