研究課題/領域番号 |
26750134
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
佐野 哲也 山梨大学, 総合研究部, 助教 (90533589)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 積乱雲 / 降水セル / 短時間局大雨 / Xバンドマルチパラメータレーダー / 地上気象観測 / GPS可降水量 |
研究実績の概要 |
夏季の盆地において、積乱雲の出現に伴う突然の短時間大雨がもたらされることがある。そのような生じる盆地のひとつである甲府盆地を例に、夏季に盆地上で突然出現する積乱雲の出現に先立つ気象要因の形成と発達の過程についての研究を推進している。本年度は以下の研究等がなされた。 昨年度に続き、2015年5月から10月までの暖候期に、山梨大学Xバンドマルチパラメータレーダー(X-MPレーダー)による降水の連続観測を実施し、データの取得を行った。本年度について、盆地上で出現した降水セルの事例数は、過去の事例と比較して少なかったが、それぞれの事例において局所に短時間の大雨をもたらしたことが分かった。昨年度に続き、このような現象は暖候期に少なくとも1事例は出現し、局所に短時間大雨をもたらすことがあることを確認できた。 2014年7月25日に甲府盆地の中央部で出現した降水セルの事例について、その出現前の盆地における気象場が、主に地上気象観測の結果から解析された。ほぼ中立な大気場において、弱風で高温かつ低気圧場となった盆地内に、盆地西側でやや高温かつ湿潤な空気を伴う南西風、そして盆地東側でやや高温かつ湿潤な空気を伴う南東風のそれぞれが観測された。その後、盆地の中央部で複数の降水セルで構成された対流性降水システムが出現し、約1時間維持した。個々の降水セルの寿命は短かったが、その間の最大反射強度は50dBZを超えるまでに発達した。 以上から、盆地上で降水セルが出現する前の気象場を捉えることができ、その結果から、盆地内の相当温位の上昇に伴う大気の状態の不安定化への寄与と、また南西風と南東風に伴う水平収束の形成への寄与が考えられた。そして、出現した対流性降水システムは、短寿命で急激に発達した降水セルで構成され、局所への短時間大雨の発生が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2014年度に実施した観測から事例解析を実施し、対流性降水システムの盆地上の出現に先立つ気象場とそこで出現した対流性降水システムの構造を示すことができた。対象事例について、GPS観測の大気遅延量のデータを入手することができたが、可降水量の算出にはまだ到っていない。解析がやや遅れているが、山梨大学レーダーの観測やその他の気象観測のデータの整備が進み、今後の解析と研究の取りまとめの準備が整いつつある。
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今後の研究の推進方策 |
現在解析を推進している事例を基に、盆地上での降水セルの出現に先立つ気象場の形成過程と出現した降水セルの構造と発達についての取りまとめを行う。また、過去の観測データより、盆地上で出現する降水セルの出現特性とそれに先立つ気象場についての統計的な解析を継続する。以上から、夏季に盆地上で突然出現する積乱雲の出現に先立つ気象要因の形成と発達の過程のとりまとめを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、解析に必要な気象観測データ、および観測・解析データの保存用ハードディスクの購入、そして国内会議や研究に関する情報収集のための出張旅費に費用が当てられた。しかし、予定していた国外での国際会議参加が国内で開催の国際会議に変更されたため、残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、学術雑誌や会議への投稿・参加費、および学術会議の参加や研究に関する情報収集のための出張旅費に利用する計画である。
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