夏季の盆地において、積乱雲の出現に伴う突然の短時間大雨がもたらされることがある。そのような生じる盆地のひとつである甲府盆地を例に、夏季に盆地上で突然出現する積乱雲の出現に先立つ気象要因の形成と発達の過程についての研究を推進している。本年度は以下の研究等がなされた。
甲府盆地での局地降雨をもたらす対流性降水システム(積乱雲)を構成する、1番目に出現する降水セル(プライマリーセル)の出現特性を、2012年から2014年までの6月から9月までを対象として解析した。プライマリーセルの出現位置は甲府盆地の中央部から東部にかけて集中することが分かった。またプライマリーセルの出現前には、地上気象観測より盆地の西部で南西または南南西風、東部で南東風が、盆地内の気温よりわずかに低い気温の空気を伴って観測された。そして、気象庁メソ数値予報の初期値の解析より、甲府盆地上空の大気の状態は、午前からプライマリーセルの出現が集中する午後にかけて、下層の相当温位が高くなることで不安定になることが示された。 以上の結果と、2014年7月25日に甲府盆地の中央部に出現した対流性降水システムの事例解析から、降水セル出現前の盆地内外の気温コントラストにより形成した、盆地西部の南西および東部の南東風による水蒸気輸送に伴う盆地内の湿潤化、それぞれの風により形成した水平収束に伴う水蒸気の持ち上げ、そしてその水平収束域上空での積雲スケールの上昇流による降水セルの出現が示唆された。 以上については、学術誌への掲載に向けてのとりまとめを実施している。
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