研究課題
平成26年度は模型実験の基礎となる地盤作成方法の習得、実験装置の開発、実験デザインの検討をおこなった。まず、実験の再現性を担保するため、常に同質の地盤が作成できるよう、降砂装置を作成した。その結果、土層の密度が数 % 以内のばらつきで作成できるようになった。続いて、伊豆大島の表層崩壊、紀伊半島の深層崩壊や他の地すべり発生地の地質構造や地形を参考にし、作成する土層の検討をおこなった。その結果、任意の傾斜を持った成層構造の地盤を作成すること、また、水文環境を再現するために供給した雨水の量と排水した量をモニタリングすることが必要であることがわかった。そこで、以下の特徴を持つ水槽を設計し作成した。まず、任意の土層の傾斜が再現できるようにジャッキで水槽の一端を持ち上げた状態で水平な土層を作製できるように傾斜土層が作成できるようにした。次に、水槽上部から降水として供給した水分のうち、どの程度の土層を通過し底面に至るかを測定するため、水槽底面付近に蛇口を設け排水量を測定できるようにした。さらに、水槽の底面や側面が不透水姓を持つ境界条件として作用しないようにポーラスストーンで覆うことによって水が逃げることができるようにした。また、土層内を透過する弾性波を発信するための加振器と受信するためのセンサーの選定をおこなった。土層の形状に影響を与えない程度の微弱な振動を発生させること、シグナル・ノイズ比が十分に大きな信号が得られることを条件に、透過する弾性波の周波数帯を決定し、そのような弾性波を発信することができる加振器、高感度なセンサーを選定し、実際に土層内を透過した弾性波が記録できることを確認した。
2: おおむね順調に進展している
当該年度の当初の目標は、1)模型実験をおこなうにあたって、適切な透過弾性波の周波数帯などの性質について決定し、土層の形状に影響を与えない程度に振幅の小さな透過弾性波の送受信が可能な加振器、センサーを選定すること、2)傾斜した土層を実際に作製すること、3)降雨を再現すること、4)これらを用いて実際に土層内において弾性波を透過させ実験をおこなうことであった。ジャッキアップを用いた傾斜土層の作製、排水条件・境界条件を考慮した水槽の製作に関して、当初の予定より慎重に検討した結果、自然環境の模擬として実験条件をより忠実に再現できる環境が整った。その部分に時間を要したため、降水再現の確立が来年度にずれこんだ。しかしながら、土層内を透過する弾性波を実際に受信することには成功しており、遅れた影響は軽微であると考えられ、むしろ、実験環境が整ったことによる実験精度の向上など計画全体に与えるよい影響のほうが大きいと考えられる。
今後はまず、実験装置の作製過程の最終段階として、降雨装置の作成に取り掛かる。その後は、当初の計画に沿って、雨を降らせながら弾性波の透過実験を進める。さらに、記録された弾性波の解析をおこない、土層の様子や土層内の水環境などとの比較から地すべり・崩壊発生にいたるまでのメカニズムに関して考察をおこなう。
高周波で弾性波を集録するためのモジュールについて、研究協力者の所有するものを使用したため。
自由度が高く微弱な信号が出せる加振器(現在は、研究協力者のものを使用)や高密度観測のためのセンサーの購入に充てる。
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