本研究では,これまで申請者が開発を行ってきた雪崩の流動予測手法の高度化を目指し,雪崩が発生する場所やタイミングを的確かつ迅速に検出する方法として,AEセンサ(Acostic Emission Sensor)を用いた新たな積雪内部構造の検出手法の開発を進め,積雪内部の弱層位置・大きさ・進行状況から,雪崩の発生強さ,分布域,持続時間等を明確化し,従来よりも精密な流動予測解析を行うことを目的としている。 初年度の研究目的は,積雪内部の雪崩発生個所をAE法によって把握することであったが,積雪内部のAE検出は,積雪内部の伝播速度が非常に速く,ウェーブガイドを用いた場合であっても,AEの変化を定量的にとらえることが難しいことから,AEセンサよりも低周波帯の領域を検出可能な計測が必要であることが分かった。また,これらの結果は国内で開催された日本雪氷学会年次講演会にて報告を行った。 最終年度は,AEセンサではなく,高周波帯ではあるがAEセンサに比べて低周波帯を検出可能な音波センサを用いた積雪内部の伝播特性把握を目指し,積雪内部構造との関係性を検討することを試みた。その結果,実験に用いた計測環境ノイズの除去が難しく,再現性のある結果を安定して得ることはできなかったが,雪の中を伝播する音の検出にはある程度成功したと言える。計画当初に予定していた,トモグラフィ解析を行う段階まで到達はできなかったものの,引き続きデータ分析を行い,積雪内部の構造と音の関係を追及してく。
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