研究課題/領域番号 |
26750140
|
研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
松井 翼 名古屋工業大学, 工学部, 研究員 (50638707)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | メカノバイオロジー / ストレスファイバー / 収縮力 / アクトミオシン |
研究実績の概要 |
アクトミオシン束の一種アクチンストレスファイバーの力発生過程におけるミオシンATP加水分解サイクルを調節しているのは、ミオシン調節軽鎖 (以下MRLC) のリン酸化状態であると考えられている。これまでにマクロな細胞レベルとミクロな分子レベル (ただし生化学的) ではMRLCリン酸化状態と収縮力の連関が示されてきたが、これらの中間に位置するストレスファイバーにおける実験的証拠は未だ出されていない。そこで、細胞から単離したストレスファイバーの収縮力を計測しながら、MRLCリン酸化状態に摂動を与えることで上記連関を定量的に明らかにすることを目的とする。 そこで研究初年度である当該年度においては、定量計測が可能な超解像顕微鏡法の一つであるPhotoactivated Localization Microscopy (以下PALM) を構築することを念頭に、1分子蛍光イメージングを可能にする全反射照明系を倒立型顕微鏡に構築した。本照明系構築にあたり、2色の励起光を導入することで2段階あるMRLCのリン酸化状態の可視化に対応させた。また、光活性化色素の活性化光源として紫外LED照明も導入した。またPALMに必須となる光源と画像取得装置を同期させるシステムを構築した。 また、PALMによる超解像度イメージングは長時間に及ぶため高さ方向の熱ドリフトが問題となる。そこで、赤外レーザ、ラインセンサー、および対物レンズ用Z軸ピエゾからなる自作の焦点維持システムを構築しつつあるところである。今後、上記のシステムを安定的に運用できるように改良を重ねた後、光活性化蛍光タンパク質/蛍光色素による1分子イメージングを行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
MRLCリン酸化状態を定量的にイメージングするシステムについては順調に進展している。 しかしながら、ストレスファイバーの収縮力計測のために利用を予定していた海外メーカー製高分子ゲルが非常に高価で入手困難だったため、国内メーカー製品の中から同等に高い屈折率と透明性を有し、細胞が発生する力により変形可能な柔らかい高分子ゲルを探索するのに時間がかかってしまった。
|
今後の研究の推進方策 |
まず、高い屈折率を有する高分子ゲルの硬さ、および一分子イメージング可能な基板の作製プロトコールを確立する。上記基板が準備出来次第、ストレスファイバーの収縮力計測およびPALMによるMRLCリン酸化状態の定量イメージングを行い、収縮力とMRLCリン酸化状態との連関を明らかにしていく。 上記とは別に、細胞パターニング技術により長さや太さを均一化したストレスファイバーに対して、これまで私たちが行ってきた顕微操作によるin vitro 収縮力計測を行うことで、長さや太さといった形態と収縮力の関係も明らかにしていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
高分子ゲルの選定に遅れが生じていたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
高分子ゲルを購入する。
|