研究課題/領域番号 |
26750141
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
佐藤 大介 山形大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60536960)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 末梢交感神経 / 糖取り込み / インスリン感受性 / Microstimulation |
研究実績の概要 |
申請者は末梢交感神経電気刺激による革新的かつ効果的な血糖値制御法の確立を最終目標とし、これまでに、微小電極を用いたラット末梢交感神経束への電気刺激(microstimulation)が交感神経線維を賦活し、一過性の血糖値低下を誘発する一方で、血漿インスリン濃度が変化しないことを明らかにした。本研究ではその次の段階として、microstimulationの糖取り込み亢進メカニズムの解明のため、microstimulationがインスリン感受性に及ぼす影響について検討を行った。 麻酔下のラットにマイクロニューログラム法を適用し、片側坐骨神経内の交感神経信号を微小電極によって導出した後、この微小電極を介してmicrostimulationを行った。このとき、euglycemic clamp法を用いて、microstimulation開始前、刺激中、ならびに刺激停止後のインスリン感受性を定量した。Euglycemic clamp法では、頚静脈よりインスリンを定速持続注入するとともに、グルコースを可変持続注入することで定常状態の血糖値を維持し、このときのグルコース注入速度(GIR)をインスリン感受性の指標とした。 その結果、GIRは刺激開始後に上昇し、刺激開始前のGIRに対して有意に高値であった。また、刺激停止後のGIRは刺激中のGIRに対して低下傾向を示したものの、その差は有意ではなく、刺激開始前のGIRに対しては有意に高値であった。 これらの結果は、末梢交感神経へのmicrostimulationがインスリン感受性を亢進し、糖取り込み亢進に寄与する可能性を示唆しているとともに、このインスリン感受性の亢進は、micsrostimulation停止後もある程度維持される可能性を示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定通り、ラット末梢交感神経へのmicrostimulationがインスリン感受性に及ぼす影響について、データ収集をおおむね完了した。ただし、このmicrostimulationとeuglycemic clamp法とを両立した実験系において、低侵襲な実験を進めるための技術向上に時間がかかったため、microstimulation中のラット血漿サンプルは採取・保存したものの、血漿中ホルモン濃度測定が完了していない。 ラットの骨格筋及び肝臓において糖取り込みに関与する遺伝子及びタンパク発現量解析では、実験条件の確立がほぼ予定通りに進行した。
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今後の研究の推進方策 |
実験技術の向上に時間を割いたために生じた研究の遅れは軽微であり、既に収集済みの保存サンプルからのホルモン濃度測定が完了すれば解消できる上に、この測定は市販の試薬で簡便に行うことができるため、今後の研究の推進に大きな影響はない。ただし、実験動物とその飼料ならびに実験試薬の値上がりのため、今後解析対象とする遺伝子及びタンパクの対象を、計画段階から若干縮小する可能性がある。 また、ラット脂肪組織を支配すると考えられる交感神経、例えば精巣上体周囲脂肪を走行する神経線維を電気刺激する予定であったが、予備実験の結果、対象となる神経線維が極めて細く、刺激電極を設置することが困難である可能性が考えられた。代替案として、これまでmicrostimulationの対象としてきた坐骨神経中の交感神経束を電気刺激したときの、脂肪組織中脂肪酸組成に及ぼす影響について検討することを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画に軽微な遅れがあったため、いくつかの試薬の購入を次年度に見送った。
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次年度使用額の使用計画 |
研究計画の遅れは、次年度使用額の速やかな執行で解消する。また、翌年度分として請求した助成金は、当初の計画通り支出する予定である。
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