研究課題/領域番号 |
26750145
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
玉井 美保 東京工業大学, 生命理工学研究科, 東工大特別研究員 (20619704)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | in vitro 肝炎モデル / 肝障害 / 炎症反応 / サイトカイン |
研究実績の概要 |
炎症は免疫反応によって引き起こされた後に、標的細胞の細胞死や再生、さらには活性化した線維芽細胞が入り込んだ線維化状態などきわめて複雑ある。これまでin vitro 系ではリンパ球と標的細胞の免疫反応といった部分的な研究にとどまり、全体的な炎症反応の理解のためには動物実験に頼らざるを得なかった。本研究では、炎症を理解し、克服するためのin vitro 炎症モデルの確立を目指す。 これまでに我々は、肝細胞、内皮細胞や星細胞等からなる実際の肝組織匹敵するin vitro 肝組織モデルの構築に成功した。生体に近い構造を有するこの肝組織モデルであれば、これまでに報告のない包括的な、in vivo の肝炎に匹敵するin vitro 肝炎モデルの開発につながるのではないかと考え、独自のin vitro 肝組織を用いて肝炎モデルへの応用を試みた。近年、代表的な薬物性肝障害物質である四塩化炭素やアセトアミノフェンが肝障害を起こす機構には、いくつかの炎症性サイトカインが起炎的あるいは消炎的に関与する可能性が議論されていることから、薬物性肝障害に着目し研究を進めた。先ず、マウスES細胞由来in vitro 肝組織モデルへの薬物添加により、薬物性肝障害が確かめられた。そこでこの肝障害において、炎症性サイトカインの影響を検討するため、系内にマウス脾臓から採取した脾臓細胞を共培養することで、その障害性を評価した。その結果、脾臓細胞との共培養群においてより障害が惹起される傾向が観られた。このことより、薬物による直接的な組織障害だけでなく、同時に誘導されるサイトカインが炎症を促進的に調節する現象を、in vitro において再現をすることができると期待された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はこれまでに報告のない包括的なin vitro 肝炎モデルの構築を目指すものである。初年度において、肝障害の中でも薬物性肝障害に着目し、その障害が薬物による直接的な組織障害だけでなく、同時に誘導されるサイトカインが炎症を促進的に調節する現象をin vitro で再現することが期待された。具体的には、マウスES細胞由来in vitro 肝組織を用い、系内にマウス脾臓から採取した脾臓細胞を共培養することで、炎症反応を惹起できるモデルの構築を試みた。このモデルに薬物を添加し、炎症性サイトカインの影響を再現することができ、包括的なin vitro 肝炎モデルの構築へ向けた一定の成果を得たことが理由である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、マウスES細胞由来in vitro 肝組織を用いたin vitro 肝炎モデルの応用展開を試みると共に、マウス由来肝組織の知見を活かし、ヒトiPS細胞を用いたin vitro 肝炎モデルの構築を推進する。そのために、ヒトiPS細胞を用いた肝組織構築手法の検討をおこない、より長期間維持可能なモデルの作製を試みる。ヒトモデルで炎症反応を再現するために、免疫担当細胞の検討をおこなう。最終的には独自の肝組織モデルを用いた、免疫反応による炎症を惹起し、保護物質などの添加による応答を解析することでモデルの評価をおこなう。また、作製した肝組織モデルをマイクロ流体培養装置内に作製、血流を模倣し培養液を灌流可能なモデルを構築し、静的な肝組織モデルではなく、実際の肝炎モデルになるような動的な肝組織の開発を目指す予定である。
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