研究課題
本研究は、DNAメチル化異常を持つがん細胞を対象に、分子・細胞レベルの病理検査デバイスの開発を実施するものであり、本年度は、DNAメチル化部位の染色、メチル化DNAの1分子伸長、及びメチル化DNAの1分子画像検出を行った。DNAメチル化部位の染色は、Methyl Binding Domain Protein-Biotin (MBD)を介してFluoronanogold-Streptavidin Alexa Fluor 546(FNG)を標識することで達成した。メチル化DNAの1分子伸長は、DNA溶液送液用マイクロ流路チップとDNA固定用ジグザグ溝構造チップの二種類のシリコーン樹脂製チップを張り合わせて作製したデバイスによって達成した。メチル化DNAの1分子画像検出は、メチル化部位を染色したDNA溶液をシリンジポンプによってデバイス中に流した後、ジグザグ形状の溝構造のパターン上に固定されたDNAを全反射蛍光顕微鏡で観察することで達成した。DNA固定用の溝構造に関しては、ジグザグの形状・寸法を検討し、最も固定化率の高いパターンを実験的に求めることに成功した。MBDを介したFNGによる標識に関しては、MBDとFNGの最適混合比を検討し、メチル化DNAの染色のプロセスを確立した。デバイスのDNA分子に対する捕捉率は約70%を達成し、一度に約1,500本のDNA分子を伸長固定することに成功した。
2: おおむね順調に進展している
本研究の目的は、がん細胞やがん細胞由来の診断マーカーを固定化(標本化)するデバイスを作製することにより、がん細胞が増殖を開始する前の段階から実施可能な細胞・分子計測技術を新たに構築し、早期がんに関連する病理検査学的進展を達成することである。本年度は、実験的にメチル化を発生させたDNAを早期がん由来のメチル化異常を持つDNAのモデルとして使用し、DNAメチル化部位の染色技術、メチル化DNAの1分子伸長技術、及び1分子画像検出技術を予定通り開発できており、現在までの達成度はおおむね順調に進展している。
本年度の研究実績を発展させた研究として、メチル化DNAの伸長固定を達成したデバイスを細胞向けにカスタマイズし、メチル化DNAを含むがん細胞を1細胞レベルで捕捉・アレイ化する技術開発を進める。また、細胞内DNA等の特定の生体分子を選択的に染色・検出する技術開発を進める。
一部の消耗品が見積価格より安く購入できたため。
予定の消耗品費に上乗せして使用する。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件) 産業財産権 (1件)
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