研究課題/領域番号 |
26750146
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小野島 大介 名古屋大学, 未来社会創造機構, 特任講師 (40510219)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マイクロ・ナノデバイス / 細胞・組織 |
研究実績の概要 |
本研究は、DNAメチル化異常を持つがん細胞を対象に、分子・細胞レベルの病理検査デバイスの開発を実施するものであり、本年度は昨年度のメチル化DNAを含むがん細胞を1細胞ずつ並べて捕捉する技術開発の研究実績を発展させた研究として、本技術を市販の樹脂フィルムとシーリングチャンバーで実現する実用化デバイスのプロトタイピングを行った。樹脂フィルムにはフォトリソグラフィーとドライエッチングにより数万から数十万の微細孔加工を施し、プラズマによる親水化処理を行うことで樹脂フィルム表面の濡れ性を向上させ、これをシーリングチャンバーと組み合わせて使用することで、ピペッティング操作のみにより細胞懸濁液を微細孔へほぼ100%導入することを実現した。一方、プラズマによる親水化処理は、市販の高分子剤を用いたコーティング処理で代用可能なことを明らかにし、微細孔内にがん細胞を1細胞ずつ捕捉する確率を向上させた。コーティング処理後の表面上では、がん細胞を容易に操作することが可能となり、微小標的の吸引・採取システムを利用することで、1細胞捕捉したがん細胞の回収に成功した。また、回収後のがん細胞に対する1細胞由来のDNAからメチル化異常を遺伝子解析し、1細胞から培養する技術開発に向けて、がん細胞表面の染色技術の開発を進めた。染色液の希釈率や染色用抗体の条件を実験的に検証し、樹脂フィルムがもつバックグラウンドノイズと区別可能な染色プロトコルを確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は、がん細胞やがん細胞由来の診断マーカーを固定化(標本化)するデバイスを作製することにより、がん細胞が増殖を開始する前の段階から実施可能な細胞・分子計測技術を新たに構築し、早期がんに関連する病理検査学的進展を達成することである。本年度は、メチル化DNAを含むがん細胞を1細胞ずつ並べて捕捉するデバイスのプロトタイピング、1細胞捕捉したがん細胞の回収、がん細胞表面の染色技術を開発できているが、主な実験を担当する大学院生が年度後半に膿瘍治療のため長期入院する事態が起こり、当初計画していた1細胞由来のDNAからメチル化異常を遺伝子解析する技術開発や、回収後のがん細胞を1細胞から培養する技術開発に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
補助事業期間を1年間延長し、1細胞由来のDNAからメチル化異常を遺伝子解析する技術開発、及び回収後のがん細胞を1細胞から培養する技術開発に生じた遅れに対応する実験を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
主な実験を担当する大学院生の入院により実験スケジュールに遅延が発生し、補助事業期間を延長する事情となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
延長した補助事業期間中の物品費、旅費、その他等の支出に使用する。
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