本研究は、DNAメチル化異常を持つがん細胞を対象に分子・細胞レベルの病理検査デバイスの開発を実施するものであり、本年度は昨年度に生じた遅れを補完する実験実施に向けて補助事業期間を1年間延長し、当初計画していた1細胞由来のDNAからメチル化異常を遺伝子解析する技術開発を進めた。これまでの研究により、メチル化DNAを含むがん細胞を1細胞ずつ並べて捕捉するデバイスのプロトタイピング、1細胞捕捉したがん細胞の回収、がん細胞表面の染色技術を開発できていたため、本年度はリアルタイムPCRによる核酸成分の微量検出と変異検出を通じて、がん細胞のDNAを遺伝子解析するプロトコルの開発を行った。微小標的の吸引・採取システムの利用に加え、がん細胞を捕捉した樹脂フィルムから直接DNA抽出とDNA増幅を行った後に定量PCRを行う試験を実施し、がんに関連した細胞株(H1975)が持つ上皮成長因子に対応する二種の遺伝子(T790M、L858R)を対象にPCR条件を検証した結果、樹脂フィルム上に捕捉したがん細胞からターゲットの遺伝子変異を検出することに成功した。さらに、メチル化および非メチル化されている塩基を特異的に増幅してメチル化の状態を分析するMSP解析を行った。CpG配列のメチル化状態に応じて配列が変わる塩基部位に対して、メチル化DNA検出用プライマーと非メチル化DNA検出用プライマーを設計してPCRを行った結果、増幅の有無によりメチル化または非メチル化が識別できることを確認した。
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