本研究は,初期血栓生成の1モデルとしての“コラーゲン繊維に対する血小板の粘着挙動”について,コラーゲン繊維と血小板粘着との関係性を明確にする事を目的とした.具体的には,血流方向に対するコラーゲン繊維の角度による血小板粘着量の変化や,血液を流す時間による血小板粘着量の変化がどのように表れるか検証する事を目的とした。血小板とコラーゲンをそれぞれ標識する手法を検討するため、位相差顕微鏡を簡易的に共焦点化する技術を導入したが、この技術を利用した染色撮影が成功には至らなかった。そこで、まずは通常観察法に戻り、コラーゲン繊維と血小板の両者の関係を定量化する画像解析手法を構築した。血管内皮細胞の損傷部をモデル化したコラーゲンコーティングを施したスライドガラスをフローチャンバーに真空ポンプで圧着させ,シリンジポンプで血流を作用させて、血小板のコラーゲン繊維への粘着挙動を顕微鏡下で観察した.実験後,血液を流す前のコラーゲン繊維の画像と,血液を流した後の血小板が粘着した状態のコラーゲン繊維の画像を比較することで,血流方向に対するコラーゲン繊維の角度別の血小板粘着成功率[%]を画像解析で求めた.実験結果については、血流方向に対するコラーゲン繊維の角度が小さい場合には血小板の粘着率が高く,コラーゲン繊維の角度が大きい場合には血小板が粘着しにくい傾向が1年目の研究の結果、12回中7回の実験にて得られた.2年目においては、更に再現性を検証するために、画像処理技術を向上させ、顕微鏡観察にて得られたコラーゲン繊維の形状情報をスプライン近似された曲線分の集まりとして認識が可能となった。この手法を応用し、さらに10回実験を実施した結果、予想とは逆に流れに繊維勾配が垂直な程、粘着数が多少増大する結果を得た。しかしながら、得られたデータから統計的な有意差は得られなかった。現象の判断には引き続き、検討を要する。
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