研究課題/領域番号 |
26750155
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
田村 篤志 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教 (80631150)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | シクロデキストリン / ポリロタキサン / コレステロール / ライソゾーム病 / ニーマンピック病C型 / リソソーム / オートファジー |
研究実績の概要 |
研究代表者は、ニーマンピック病C型(NPC病)に対する治療薬としてβ-シクロデキストリン(β-CD)空洞部に高分子鎖が貫通したポリロタキサンの利用を提唱している。本研究課題では、NPC病モデルマウスに対する治療効果を明らかとすることを目的に研究を実施した。平成27年度は、NPC病モデルマウスにポリロタキサン、または現在臨床試験が進められているヒドロキシプロピル-β-CD(HP-β-CD)を投与し、治療効果の評価を行った。NPC病モデルマウスの生存期間は中央値で68日であったのに対し、ポリロタキサン投与群(500 mg/kg)では生存期間が89日まで延長した。HP-β-CDを4000 mg/kgで投与したマウスでは生存期間の延長が確認されたが、ポリロタキサンと同濃度である500 mg/kgで投与した場合には有意な生存期間の延長が認められなかった。次に組織レベルでの治療効果を評価した結果、NPC病モデルマウスでは主要臓器中のコレステロール含量の増加、AST, ALT値の増加、ならびに各組織の空胞化が認められた。一方、ポリロタキサンを投与したNPC病モデルマウスでは主要臓器中のコレステロール含量、AST、ALT値が野生型マウスと同レベルまで減少した。また、各組織の空胞化の程度も軽微であった。 ポリロタキサンの安全性を確認するために、野生型マウスに対しポリロタキサンを反復投与し、安全性評価を行った。ポリロタキサンの投与による急性毒性、体重変化、組織形態の変化、炎症の惹起、ならびに血中成分の濃度の有意な差は認められなかった。HP-β-CDは高濃度での投与により組織障害性や聴力低下等の副作用を示すことが指摘されているが、ポリロタキサン低濃度での投与でもNPC病モデルマウスに対する治療効果を示すとともに、野生型マウスに対しては顕著な有害事象は示さないことから、より有効な薬剤としての応用が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生存期間の評価など長期的な観察が必要な実験に時間を要したため、一部の実験で結果が得られていないものの、本年度の研究により本研究課題の目的であるNPC病モデルマウスに対するポリロタキサンの治療効果を明らかにすることができた。よって、本研究課題はおおむね順調に進展していると評価することができる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はより効果的なNPC病治療薬の開発を目的に、ポリロタキサンの分子設計や投与形態を改良することで脳へのターゲティングの可能性について検討する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本課題では、ニーマンピック病C型(NPC病)に対するポリロタキサンの治療効果を明らかにすることを目的としている。具体的にはNPC病モデルマウス(Npc1ノックアウトマウス)を作成し、ポリロタキサン投与後の生存期間等を目安に生存期間を評価するが、所属機関の動物実験施設の改修工事が遅れたため、それに伴い動物実験開始が半年遅れることとなった。大部分の実験については既に実験結果を得ているものの、長期的な観察が必要な実験は事業期間内での終了が困難な見通しのため、事業期間の延長を申請するとともに予算の一部を次年度へ繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越した予算は動物実験施設利用料、ならびに動物実験消耗品の購入に使用する計画である。
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