研究課題/領域番号 |
26750156
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
橋本 良秀 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 寄附研究部門助教 (40638384)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ナノゲル / 多糖 / 成長因子 / ナノマトリクス |
研究実績の概要 |
神経変性疾患や脊髄損傷の治療を目的として、神経幹細胞移植による中枢神経系の再生が試みられているが、神経幹細胞のみを損傷部位に移植するだけでは、脳脊髄液の循環による移植細胞の分散やニューロン分化率の低さから、効果的な神経組織の再生は望めない。生体内において細胞の機能は、細胞間の相互作用や細胞周辺に存在する細胞外マトリクス、さらには細胞増殖因子やサイトカインによって厳密に制御されているためである。本研究は、神経幹細胞の機能を制御可能な人工細胞微小環境として、エキソソームと疎水化グリコサミノグリカン(GAG)ナノゲルを複合化したナノマトリクスの開発を行うことを目的としている。本研究で提案するエキソソームを組込んだナノマトリクスは、疎水化ナノゲルに内包した増殖因子によるシグナル伝達に加え、エキソソームにより遺伝子発現をコントロールすることで細胞機能を制御するものである。 今年度は、基盤材料となる疎水化GAGナノゲルの合成とキャラクタリゼーションを行った。具体的には、まず、末端にイソシアネート基あるいはアミノ基を有するコレステロール誘導体を合成し、縮合反応によりGAG側鎖の水酸基あるいはカルボキシル基への導入を試みた。NMR測定の結果から、アミノ基を有するコレステロール誘導体を用いた方が効率的に導入可能なことが明らかとなった。次に、種々の置換率を有する疎水化GAGを合成し、動的光散乱測定により粒子径を算出した。直径数百ナノメートルの微粒子が形成されていることが確認され、疎水化GAGナノゲルの作製に成功した。続いて、疎水化GAGナノゲルを集積化するために、さらに重合性基の導入を試みたが、反応中におけるゲル化が観察され、現在条件検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年12月1日に所属機関を異動したため、申請時点とは研究環境が大きく異なることとなった。現所属機関でも、研究計画を十分に遂行できる環境であるが、その準備に相応の時間を要したため、予定よりやや遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度中に研究環境は概ね整備されており、平成27年度はやや遅れている研究パートの疎水化GAGへの重合性基の導入を早急に進める。これまでは、反応性の高いアクリロイル基の導入を試みていたが、メタクリロル基などの官能基に変更することで合成中のゲル化の問題は解決可能だと考えている。動物実験の環境も整っており、ナノマトリクスが得られ次第、in vitroおよびin vivo試験に移行していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属機関の異動に伴う事務手続きにより、科研費の執行が数ヶ月ストップし、必要物品が購入できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
多糖原料・合成試薬など昨年度不足した試薬を購入する。また、異動に伴い新たに購入する必要がでてきた、エバポレーターなどの少額備品の購入に使用する。 今年度の助成金は申請書通り使用する。
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