本研究では、神経幹細胞の増殖・分化などの細胞機能を制御するための人工細胞外マトリクスを構築することを目的としている。本年度はまず、昨年度に達成できなかった疎水化グリコサミノグリカン(疎水化GAG)ナノゲルに対する重合性基の導入条件の検討を行い、酸性ムコ多糖を主成分とする疎水化GAGナノゲルにメタクリロイル基を導入することに成功した。また、得られた重合性疎水化GAGナノゲルの動的光散乱測定から直径約100nmの微粒子を形成していることを明らかにした。さらに、重合性疎水化GAGナノゲルとチオール末端ポリエチレングリコール(PEGSH)を任意の割合で混合することによりナノゲルを集積化することに成功した。一方で、重合性基を有する疎水化GAGナノゲルの合成が順調に進まない可能性も想定し、中性多糖ナノゲルから構成される人工細胞外マトリクスの作製にも着手した。中性多糖ナノゲル集積マトリクスに関しては、in vitroにおいて幹細胞との相互作用について解析し、細胞形態や増殖、分化に影響を与えることを見出した。 疎水化GAGナノゲルのキャラクタリゼーションとして、タンパク質との相互作用について検討を行った。その結果、疎水化GAGナノゲルはタンパク質と複合体を形成することが明らかとなった。疎水化GAGナノゲル集積マトリクスとエキソソームとの複合化について検討した。エキソソームは疎水化GAGナノゲル集積マトリクス内に安定に保持されることを見出した。ナノゲル、タンパク質、エキソソームが集積・複合化した人工細胞外マトリクスの構築に成功し、これらが協奏的に作用することで細胞機能を制御できる可能性が示唆された。
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