研究課題/領域番号 |
26750159
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
小西 敏功 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (10587843)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | リン酸カルシウム / 銅 / 骨補填材 / 骨誘導 / 血管新生 |
研究実績の概要 |
当該研究は自家骨の骨誘導能に匹敵する骨形成能および血管形成能を備えた人工骨材料を創製することを目的とする。人工骨材料を用い、骨修復セメント技術に基づいて注射器で患部に注入可能な低侵襲治療型ペースト状人工骨へと応用展開する。 平成27年度は銅イオン(Cu)を含むβ-リン酸三カルシウム(CuTCP)を液相合成法により合成することを試みた。カルシウムおよびリン酸源を出発原料として、Caに対して0-10 mol%のCuを含むβ-TCPの合成を種々の合成条件下で試みた。得られた粉体の結晶構造・分子構造解析の結果から、合成粉体はわずかにピロリン酸カルシウムを含むものの、β-TCPを主相とすることが明らかとなった。また、元素組成分析から仕込み量とほぼ同量のCuが粉体中に含まれていることが確かめられた。 また、骨芽細胞様細胞MC3T3-E1を用いてCuTCPの細胞毒性を調べた結果、0, 0.1, 1 mol%のCuTCPでは細胞毒性が認められなかったが、5, 10 mol%のCuTCPでは細胞毒性が認められた。つまり、0.1, 1 mol%のCuTCPは骨芽細胞による骨形成を阻害せずに、血管内皮細胞による血管新生を促進することが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度はペースト状人工骨作製のための原料粉体となるβ-TCPの液相合成法を確立することを目指した。液相合成法法によりβ-TCPを合成した結果、銅を格子内に含有したβ-TCP粉体が作製できることを明らかにした。また、骨芽細胞による細胞毒性試験の結果、0.1, 1 mol%のCuTCPでは細胞毒性を示さないことが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
1. ケイ素および銅含有TCPを用いたキレート硬化型ペースト状人工骨の作製法の確立 前年度に作製したβ-TCP粉体からセメント原料粉体を調製し、臨床応用可能なスペック(強度・硬化時間・粘性など)を持ち、注射器などで注入可能なペースト状人工骨の作製方法を確立する。 2. in vitroおよびin vivoでのペースト状人工骨の血管形成能の評価 ペースト状人工骨に細胞を播種し細胞増殖・細胞形態等を検討することで血管形成能を示す最適な銅含有量を見出す。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度、効率的な研究費の執行により残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に繰り越せた研究資金はTCPの血管形成能を検討する研究に充当する。
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