本研究では生体硬組織の再生を実現させるために、既存材料の中では最も優れた生体活性を示す水酸アパタイト(HAp)からなる多孔質スキャフォルド(Apatite-fiber Scaffold; AFS)を創製し、三次元的な構造を有する骨組織を構築することを目的としている。さらに、骨再生過程における血管新生制御の重要性に注目し、血管新生能を有するタンパク質を担持させたスキャフォルドを創製し、血管誘導能を有する足場材料の開発を目指している。平成28年度は、血管新生能を有するタンパク質である結合組織増殖因子(CTGF)を担持させたスキャフォルドをウサギ脛骨へ埋入したサンプルの非脱灰研磨標本について詳細な解析を実施した。その結果、CTGF存在下において、スキャフォルド周囲へ細胞が集積する傾向が認められた。さらに、スキャフォルド周囲および内部において、CTGFを担持することで石灰化骨量が増加した。また、スキャフォルド内部への細胞侵入性も亢進しており、CTGFがスキャフォルド中心部まで細胞移動を促進するを裏付けている。他方、in vitroにおける血管内皮細胞と骨芽細胞の共培養時のCTGFの影響についても解析した結果、CTGF濃度依存的に毛細血管網が増加し、さらに、アルカリフォスファターゼ活性も増加した。さらに、この時、骨分化に関連する種々のマーカー遺伝子の発現や血管内皮細胞のマーカー遺伝子の発現が増加した。 以上のことから、骨芽細胞と血管内皮細胞を共培養し、CTGFを処理すると、骨分化や血管新生が促進され、このCTGFを三次元培養基材へ担持させると血管新生を伴う骨形成が促進され、生体骨に類似した再生培養骨の構築が可能になると期待できる。
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