研究課題/領域番号 |
26750165
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
西村 隆宏 大阪大学, 情報科学研究科, 特任助教 (10722829)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Point-of-Care Testing |
研究実績の概要 |
薬物治療において,薬効,副作用,服用状態などを正確に把握するために,血中薬物濃度が重要となる.低侵襲,迅速,安価な薬物分析手法があれば,手軽に,頻繁に,場所を選ぶことなく適宜血中薬物濃度レベルを確認でき,より安全かつ有効に薬物治療を進めることが可能と考えられる.本研究では,採血不要の迅速な薬物分析に向け,紙製基板を用いた涙液のラマン分光分析による手法の開発を行った. 基礎的検討として,セルロース紙に金ナノロッドを吸着させ,紙製SERS基板(PSERS)を作製した.SEMによる観察から,セルロース上に均一に金ナノ粒子が吸着していることを確認にした.PSERSの増強効果と検出限界を明らかにするため,てんかん薬として利用されるフェノバルビタールナトリウム(PB)水溶液を測定した.紙のみによるラマン分光測定に比べ感度が向上することが示された(紙:≧100 mM,PSERS:≧1 mM).ヒト涙液には,タンパク質をはじめ様々な不純物が含まれており,それらと分離して薬物を検出することが必要となる.ヒト涙液に成分を模した擬似涙液を作製して溶媒とし,PSERSを用いてフェノバルビタールの測定を行ったところ,水溶液中と同様に1 mMまでPBのピークが観察され,涙液中薬物分析への適用可能性が示された.PSERSは低コストかつ簡易に作製でき,臨床における実用が期待できる.今後,励起波長や金ナノ粒子構造の設計やすることにより,臨床上必要な感度の達成を測る.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の計画である,紙ベース基板を利用したSERSによる薬物同定・濃度定量を達成し,本手法の実現可能性を示した.ただし,臨床での治療薬物モニタリングへの利用には,さらなる感度向上が必要であるなど課題が明らかになったため,当初計画と比べ,やや遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
今回作製したPSERS基板による測定では,治療薬物モニタリングに必要とされる検出感度を達成できていない.SERS強度は対象分子の共鳴条件にも依存性を示すため,対象薬物の吸収波長に合わせて,励起レーザーの波長,金属ナノ粒子のサイズと形状を選択することで,より高感度な薬物測定をめざす.
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次年度使用額が生じた理由 |
専用の測定光学系の構築が次年度に遅れているため.
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次年度使用額の使用計画 |
最適な照射波長が実現できる光源や測定光学系のための光学素子の購入に充てる.
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