研究課題
近年,世界的な社会問題となっている乳がんにおいて,腫瘍の良悪診断や,焼灼針治療における治療効果判定を対象とした低侵襲かつ高精度な新しい低侵襲医用画像生成手法の開発が期待されている.非線形弾性パラメータにより組織性状を高精度に判別可能という知見をもとに,申請者はこれまで,ロボットで組織を静的に圧縮し,変形と力情報から非線形弾性パラメータ分布を逆解析する手法に取り組んできた.本申請では,静的マニピュレーション手法により得られる非線形弾性パラメータ分布からより高分解能な組織分布を把握するために,非線形弾性体の共振特性と組織形状特性を利用した非線形弾性パラメータ分布推定手法を提案し,提案手法の精度と有効性を実験検証する.初年度は,以下の研究課題に取り組んだ.(1) 乳房組織の振動特性の測定: これまで申請者らが取り扱ってきた非線形弾性モデルは,数Hzの周波領域の振動特性から構築されたものである.しかし,生体軟組織の共振周波数は数百Hzの範囲にあると考えられるため,数百Hzの周波領域の振動応答を見た場合に,数Hzの振動モデルからどのように変化するかを調べる必要がある.また,粘性の影響により共振周波数付近でも振幅の増幅が小さい可能性もあるため,振動特性を計測する必要がある.そこでまず,生体軟組織に近い粘弾性特性を有する高分子ゴムに対し打撃試験を行い,周波数解析によりピークが存在するかどうか,また,ピークが発生する周波数範囲を検討した.(2) 医学系の研究協力者との評価実験の検討:任意の硬さに調整可能で,ヒト乳がん組織と周辺組織の固着状態を模擬可能なin vivo評価実験用の模擬腫瘍材料に関して,医学系の研究協力者と検討した.
2: おおむね順調に進展している
当初の研究計画のうち,乳房組織の振動特性の測定,医学系の研究協力者との評価実験の検討については,おおむね順調に進展している.評価実験用の振動エンドエフェクタの開発に関しては,製作作業までは至らなかったが,要素設計や製作に必要な物品の選定は進めている.
次年度は,まず,振動試験により構築した非線形粘弾性振動モデルから,有限要素法により振動解析を行う数値解析プログラム,および,それを用いた逆解析プログラムを製作する.また,振動エンドエフェクタを製作し,提案手法の評価実験を行う.
計画当初は振動エンドエフェクタの製作を本年度中に完了する予定であったが,製作作業は次年度にまたいで実施することになったため,次年度使用額が発生した.
次年度使用額分は,次年度の支払い請求額と合わせて,振動エンドエフェクタの製作費として使用する.
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件)
International Journal of Computer Assisted Radiology and Surgery
巻: Vol. 10, Issue 5 ページ: 593-601
10.1007/s11548-014-1100-2