近年,世界的な社会問題となっている乳がんにおいて,腫瘍の良悪診断や,焼灼針治療における治療効果判定を対象とした低侵襲かつ高精度な新しい低侵襲医用画像生成手法の開発が期待されている.非線形弾性パラメータにより組織性状を高精度に判別可能という知見をもとに,申請者はこれまで,ロボットで組織を静的に圧縮し,変形と力情報から非線形弾性パラメータ分布を逆解析する手法に取り組んできた.本申請では,静的マニピュレーション手法により得られる非線形弾性パラメータ分布からより高分解能な組織分布を把握するために,非線形弾性体の共振特性と組織形状特性を利用した非線形弾性パラメータ分布推定手法を提案する.本年度は,以下の研究課題に取り組んだ. (1)乳房組織の振動解析:非線形弾性パラメータ分布推定プロトコルを検討するために,振動解析シミュレータにより,非線形弾性パラメータ分布の差異による振動特性の差異を解析した. (2)評価実験装置の開発:乳房組織に変形を与える評価実験用のロボットの設計・製作をおこなった.非線形弾性パラメータ分布の推定を行うにあたり,ロボット先端の位置・姿勢は腫瘍位置に対して決定するため,ロボット先端の位置決めを行いやすいようにRCMリンク機構を採用した. (3)医学系の研究協力者との評価実験の検討:前年度に引き続き,任意の硬さに調整可能で超音波画像で視認可能なin vivo評価実験用の模擬腫瘍材料に関して,医学系の研究協力者と検討を行った.
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