本研究は,クローラ型の自走式大腸内視鏡デバイスを開発することを目的としている.当該年度は,以下の研究成果が得られた. 1.クローラベルトの本数の最適化:クローラベルト本数と牽引力との定性的関係を理論と実験の両面から検証した.理論解析では,本構造における力学的関係をロボット内部に作用する摩擦力とベルトとパイプとに発生する摩擦力,およびベルトの弾性力を用いた簡易モデルにより,ベルト本数が牽引力に与える影響を解析し,最適本数を検討した.また,実験によって理論解析の妥当性を実証した. 2.ベルト歯型の改良:本クローラロボットの牽引力向上のために,ベルト歯型の改良を行った.具体的には,現状のベルト歯形はフラットな平面であるため,曲面のウォーム歯形とかみ合った際にかみ合い面積が低いことに起因して,ベルトの弾性変形量が過多になることでかみ合い効率低減を引き起こしているのではないかと考えた.これを解決するために,ベルト歯形の表面形状をウォーム歯形と同一曲面形状とすることで,かみ合い時の弾性変形量の低減化を図った.結果,改良歯型によって,約40%のかみ合い率向上を実現することができた. 3.ワイヤーシャフト型クローラ構造の改良:昨年度開発したワイヤーシャフト駆動型構造では,ウォームギヤとベルトとのかみ合い精度が低いことが原因で,ロボットを駆動後,短時間で走行不能になる現象が多く見られた.これを解決するために,加工精度の向上およびベアリング支持によるかみ合い精度を向上することで,長時間の連続走行を実現することができた.
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