研究課題
本研究では、光遺伝学的手法を用いた脊髄損傷後の歩行機能再建法を開発してきた。これまでの研究で脊髄に光を照射する手法を確立したので、本年度は完全麻痺の脊髄損傷ラットに対して光遺伝学的手法が歩行機能再建に有効であるか検証を行った。チャネルロドプシン遺伝子を強制発現させたラットに対して胸髄完全離断を行い、完全麻痺ラットを作製した。損傷5-6週間後に歩行中枢のある腰仙髄部に青色光を照射するために、脊髄窓を移植した。その後、脊髄損傷後に脊髄のどの位置を光刺激すると関節運動が増加するかを検証するために、完全麻痺ラットを体重免荷2足歩行装置に設置し、腰髄から仙髄までの7か所について光ファイバーを用いて光刺激した。その結果、腰髄下部を刺激した場合、光刺激に反応した関節運動が増加し、歩行機能に必要な左右交互運動も観察された。これらの結果を元に、LEDアレイを用いて腰髄下部を光刺激し、トレッドミル稼働中に完全麻痺ラットの歩行機能が回復するかを検証した。完全麻痺ラットではトレッドミル稼働中に、関節運動が観察されず、後肢は麻痺したままであったが、光刺激を行うと、股、膝、足関節の関節運動が観察され、光刺激によって歩行ステップが引き起こされた。これらの歩行ステップをさらに促進させるために、セロトニンアゴニストを投与したところ、光刺激中に股、膝、足関節の関節角度変化がさらに大きくなり、明らかな歩行運動が観察された。これらの結果から、セロトニンアゴニスト投与とオプトジェネティクスの併用治療によって、完全麻痺ラットの歩行機能を回復させることに成功した。光遺伝学的手法を用いた脊髄損傷治療は歩行機能再建に有効であることが明らかになった。
3: やや遅れている
脊髄に長期的、安定的に青色光を照射する方法の確立が困難なため、長期的な歩行リハビリテーションの結果を得られていない。
現在までの成果をまとめて有名国際誌に論文投稿中である。
成果をまとめ、その論文が受理されるまでに時間がかかってしまっているため。
論文投稿料及び学会発表のための旅費等に使用する。
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Annual International Conference of the IEEE Engineering in Medicine and Biology Society
巻: 37th ページ: 4578-4581
10.1109/EMBC.2015.7319413