変形性膝関節症(OA)において、ヒアルロン酸投与と運動の併用療法により、OA患者関節液中のIL-6や細胞外基質分解酵素活性が低下したことを昨年度報告している。そこで今年度、患者で観察された併用療法の効果の詳細メカニズムを検討するために、ラットOAモデルを用いて組織学的な解析をより詳細に行った結果、併用療法を行った群において軟骨細胞変性に良い効果がみられることがわかった。 6週齢ラットの右膝関節のACL、MCLを切断、内側半月の前半部を除去し、術後7日目よりトレッドミルを用いて4週間の運動負荷を行い、OAの状態を誘発した。OAの進行度別に解析を行うために、運動強度別に3群(速度15m/min,A群:5分、B群:30分、C群:60分)を設定した。また、3群をそれぞれヒアルロン酸非投与群と投与群(1回/1週)に分けて、両者の軟骨破壊度の比較検討を行った。 OAラットに運動のみを行った結果、運動負荷が大きくなるほど、組織破壊が著明であった。運動負荷の軽い群では、関節軟骨の変性が表層の軟骨膜のみ観察されたのに対し、負荷の大きい群では、変性が深層にまで達していた。さらに、これらの群の膝関節内にヒアルロン酸を投与した場合、運動負荷のみの群と比べて軟骨変性が著明に軽減していた。また、興味深いことに、運動のみを行った群では、軟骨細胞の肥大化が目立っていたのに対し、ヒアルロン酸を加えた群では軟骨細胞層のカラムがきれいに保たれている様子が観察された。 運動負荷のみを加え続けた状態では軟骨破壊は助長される。運動とヒアルロン酸投与の併用療法の有用性について、患者の臨床データだけでは分かり得なかった軟骨組織の変化に着目しつつ、組織学的観点から報告する。
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