研究課題/領域番号 |
26750187
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
梁 楠 広島大学, 医歯薬保健学研究院(保), 助教 (70512515)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 末梢求心性感覚入力 / 両側下肢運動 / 運動循環応答 / 中枢神経系 |
研究実績の概要 |
健常者を対象として、他動運動に伴う末梢求心性感覚入力が中枢運動指令に与える影響について調べた。具体的には、自転車エルゴメーターの他動運動中に運動イメージを行い、その時の心電図と血圧を経時的に計測した。運動イメージは実際の運動を行わずに脳内でその運動を想起することとして定義でき、末梢求心性感覚入力が伴わないことから中枢性運動循環調節を評価するのに有効である。エルゴメーター他動運動は回転数60 rpm、1分間の運動とし、正回転と逆回転の2課題を設定した。運動イメージは実際の正回転運動と逆回転運動をイメージすることとし、その直前に実際の随意運動も実施した(負荷は100ワット)。結果として、随意運動時では正回転運動よりも逆回転運動のほうが心拍数と血圧の上昇が高かったが、他動運動時では両者に有意な差がみられなかった。一方、運動イメージ時では正回転運動よりも逆回転運動のほうが循環応答が大きい傾向にあり、随意運動時と同様な結果が得られた。また、他動運動中に同様の運動イメージを行うと、運動イメージのみあるいは他動運動のみの時と比べ循環応答が有意に大きく、正回転と逆回転運動では同様な結果が得られた。さらに、他動運動と運動イメージが一致する場合は一致しない場合よりも循環応答が大きかった。以上のことから、自転車エルゴメーター運動の方向によって循環応答が異なることが示され、末梢求心性感覚入力よりも中枢性循環調節による関与が強いことが示唆された。また、他動運動は中枢性循環応答を亢進させることができるが、その運動が一致しない場合よりも一致する場合のほうがより循環応答が大きいことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
両側下肢の他動運動時における運動循環系の変化、とりわけ中枢性の循環応答について検討することができた。
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今後の研究の推進方策 |
同側および対側下肢の他動運動時、Ia群筋線維を介した求心性入力によって脊髄α運動ニューロンの興奮性が減少することが明らかになった。また、ダイナミックな自転車エルゴメーター他動運動は中枢性循環応答を亢進させることでき、運動の方向によって亢進の程度が異なることが明らかになった。循環調節中枢として脳幹が大きな役割を果たしているため、おそらく脳幹での中枢神経ネットワークの興奮性が変化したことが予想されるが、今後検討する余地がある。また、大脳皮質も中枢性運動循環調節に寄与していると言われているが、他動運動によって大脳皮質の興奮性がどのように変化するかは明らかではない。さらに、他動運動の方向について検討したが、運動の速度や種類についてまだ検討する必要がある。以上のことを踏まえた上で、最終年度では他動運動が中枢神経系の興奮性変化に与える影響についてさらに具体的に調べていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験消耗品の中で予定より安く購入できたものがあったため、その余った金額を次年度の助成金と合わせて使用したい。
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次年度使用額の使用計画 |
主に実験消耗品を購入する予定である。
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