研究課題/領域番号 |
26750189
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
佐々部 陵 長崎大学, 病院(医学系), 技術職員 (50710985)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 不動 / 関節包 / 線維化 / type I collagen / 筋線維芽細胞 |
研究実績の概要 |
本年度は不動によって惹起される関節包の線維化の分子基盤の解明を目的とし,不動状態に曝されたラット膝関節後部関節包におけるtype I collagenおよび,collagenの増生に関与する筋線維芽細胞の動態変化について検討した.実験動物には12週齢のWistar系雄性ラット30匹を用い,両側股関節・膝関節を最大屈曲位にてギプスで1,2,4週間不動化する不動群と各不動群と同週齢まで通常飼育する対照群に振り分けた.各不動期間終了後は麻酔下で両側膝関節を摘出し,組織固定・脱灰処理を施し,矢状断で二分割後,通法のパラフィン包埋を行った.その後,連続切片を作成し, 筋線維芽細胞のマーカーであるα-smooth muscle actin(SMA)に対する免疫組織化学的染色およびtype I collagen mRNAに対するin situ hybridizationを実施した.その後,画像解析ソフトを用い,後部関節包におけるα-SMA陽性細胞,type I collagen mRNA陽性細胞を同定し,前者においては血管内皮細胞を除く全細胞数に対する陽性細胞の割合(出現率)を,後者については陽性細胞の出現率に加え単位面積当たりの陽性細胞数を算出した.その結果,不動2,4週後のα-SMA陽性細胞の出現率およびtype I collagen mRNA陽性細胞の出現率と単位面積あたりの陽性細胞数はいずれも不動群は対照群に比べ有意に高値を示し,また,不動4週後は不動2週後に比べ有意に高値を示した.以上の結果から,不動状態に曝された関節包では筋線維芽細胞の増加が生じ,type I collagen産生能を有する細胞の増加も生じることが示唆された.そして,今回増加した細胞は筋線維芽細胞である可能性が高く,筋線維芽細胞の増加によるtype I collagenの過剰産生が不動によって惹起される関節包の線維化の発生メカニズムの一端であると推察される.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の研究の目的は「不動による関節包の線維化の発生メカニズムの分子基盤の解明」であり,不動によって惹起される関節包の線維化には筋線維芽細胞の増加とそれに伴うtype I collagenの過剰産生が関与する可能性があることが明らかとなった.しかし,今年度は線維化の発生メカニズムの一端しか解明できておらず,関節包の主要構成成分であるtype III collagenの動態やその他の線維化関連因子については検討するに至っておらず課題が残る結果となった.
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの結果から,関節包の線維化には筋線維芽細胞の増加とそれに伴うtype I collagenの過剰産生が関与する可能性があることが示唆された.今後はまず不動1週モデルにおける筋線維芽細胞とtype I collagen mRNAの動態変化の解析を行い,その後はtype III collagenの動態について検討していく.また,形質転換成長因子(TGF)-β1などの線維化関連分子の動態変化についても検討する予定であるが,In situ hybridizationのprobeの条件設定に時間を要する場合には,type III collagenの検討を終えた時点で次年度以降の振動刺激を用いた治療介入効果の検討に移行することも視野に入れている.
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度は不動による関節包の線維化の発生メカニズムの解明を目的として,不動状態に曝された膝関節関節包におけるtype III collagenの動態やその他の線維化関連因子についても検討する予定であったが,そこまでに至っておらず,解析に使用する試薬等を購入する必要がなかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度以降,不動状態に曝された膝関節関節包におけるtype III collagenや形質転換成長因子(TGF)-β1などの線維化関連分子の動態変化についても検討する予定であり,この解析に必要な試薬等の購入に充てる予定である。
|