研究課題/領域番号 |
26750199
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
橋立 博幸 杏林大学, 保健学部, 講師 (00369373)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 維持期脳卒中片麻痺 / 歩行 / 杖操作 / ラインステップ / 歩行リズム / 歩行速度 / 歩幅 / 教示 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、地域在住の維持期脳卒中片麻痺者における簡便な教示による歩行練習の介入効果を具体的に明らかとすることである。 平成26年度では、通所施設を利用する地域在住の維持期脳卒中者を対象に、まず、杖操作促進歩行(杖を早く出して歩くように教示して実施する歩行)、麻痺側下肢ラインステップ歩行(歩行路上の直線歩行方向を示したラインを麻痺側下肢で踏むようにして歩くように教示して実施する歩行)、非麻痺側下肢ラインステップ歩行(歩行路上の直線歩行方向を示したラインを非麻痺側下肢で踏むようにして歩くように教示して実施する歩行)を最大歩行速度で実施した。その結果、教示をしない歩行に比べて教示をした歩行では歩行速度が有意に増加し、麻痺側下肢および非麻痺側下肢の平均1歩行周期時間が有意に低い値を示したことから、本研究で用いた教示が維持期脳卒中片麻痺者の歩行パフォーマンスを即時的に向上させる可能性が示唆され、これらの教示を用いた歩行練習を実施することによって歩行パフォーマンスの改善を加速させることが期待される結果となった。 そこで、通所施設を利用する地域在住の維持期脳卒中者を対象に、杖操作またはラインステップの教示を用いた歩行練習の効果について、1か月ごとの歩行練習介入期(B)、歩行練習非介入期(A)、歩行練習介入期(B´)とを設定した3か月間のシングルケースデザイン(BAB´型デザイン)にて検証した。その結果、一定の対象者において歩行練習介入期での即時的な歩行速度の増加ならびに歩数の減少(歩幅の増加)が認められ、とくに歩行練習介入期(B)では即時的効果と累積効果が良好であった。また、教示による歩行練習後の歩行速度および歩数の変化は、高次脳機能障害が少なく介入前の歩行速度が比較的遅い人においてより明らかとなる傾向があり、本研究で検証している歩行練習の適応に関する基礎資料が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度では、横断研究の結果から、杖操作の促進またはラインステップによる教示によって歩行パフォーマンスが即時的に増加し得ることが示された。この結果は、本研究課題にて検証を進めている歩行練習の効果の説明根拠となる基礎資料になり得ると考えられる。また、シングルケースデザインによる検討結果から、杖操作の促進またはラインステップによる教示を用いた歩行練習によって維持期脳卒中片麻痺者の歩行パフォーマンスが即時的かつ累積的に改善される可能性があることが明らかとなり、杖操作の促進またはラインステップによる教示を用いた歩行練習の効果・適応についての検討を計画に沿って進めることができている。そのため、本研究は順調に進み、おおむね期待された結果が得られてきている。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、現在の進展状況と研究計画に準じて、通所施設を利用する地域在住の維持期脳卒中者を対象に、杖操作またはラインステップの教示を用いた歩行練習が歩行パフォーマンスや生活機能に及ぼす効果について無作為化比較対照試験にて検証する。 また、平成26年度の研究成果の一部を第50回日本理学療法学術大会にて発表する予定であり、順次、論文を執筆していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は、平成26年度に購入を予定していた物品が購入困難となり、購入物品を変更したために生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、資料整理などの研究補助者および研究協力者等への人件費、知見の情報収集および成果発表のための旅費、そのほかに必要な用具等について研究費を用いる予定である。
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