研究課題/領域番号 |
26750203
|
研究機関 | 新潟医療福祉大学 |
研究代表者 |
菅原 和広 新潟医療福祉大学, 医療技術学部, 助教 (10571664)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 他動運動 / 脳磁図 |
研究実績の概要 |
本研究は,他動運動時における大脳皮質興奮性変化の神経基盤を明らかにすることを目的とした研究であり,他動運動による大脳皮質活動の経時的変化を捉えることと,他動運動が一次運動野の興奮性に与える影響を解明する.平成26年度では脳磁界計測装置を用い,他動運動の運動範囲や運動速度を複数種類設定し,他動運動時の大脳皮質活動の経時的変化を捉えること,そして次年度では他動運動時における各被験者の脳活動潜時を考慮し,他動運動と経頭蓋磁気刺激法を併用して,他動運動が一次運動野の興奮性に及ぼす影響を解明することとした.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リハビリテーションにおいて,疾病発症後に身体機能を改善させ,日常生活動作を再獲得することは非常に重要である.しかし,リハビリテーションの主な治療法である運動療法については,科学的根拠が未だ不十分であるのが現状である.その運動療法の一つである「他動運動」は,運動療法の中でも特に多く用いられ,これまで多くの研究が行われてきた.そこで,本研究では他動運動時の大脳皮質活動の経時的変化を明らかにする目的で,平成26年度は306ch MEG装置と他動運動コントロール装置(特別注文にて作成済み)を用い,申請者らが行った先行研究をさらに発展させ,他動運動の運動範囲と運動速度を複数種類設定し,他動運動による筋の伸張や短縮,皮膚の変形などの求心性入力に変化を生じさせた際の大脳皮質活動の経時的変化を明らかにすることとした. MEGを用いた今回の研究により,他動運動時に観察される短潜時成分であるPM 1は筋紡錘からの求心性反応であるため,他動運動速度により変化すること,また長潜時成分であるPM 3は他動運動時間によって影響を受け,振幅値および電流強度が変化することが明らかになった.そして,PM 3の電流発生源は一次体性感覚野に位置し皮膚感覚入力を反映している可能性が示唆された.
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度の研究計画は,他動運動時の脳磁界計測を行い,被験者毎のピーク潜時を明確にした後,各被験者のピーク潜時を考慮して,他動運動に引き続いてTMSを行い,他動運動が一次運動野興奮性に与える影響を明らかにすることである. 平成26年度のMEGを用いた研究において,他動運動後に観察される脳磁界反応を明らかにすることができた.したがって,平成27年度は他動運動による一次運動野興奮性の変化を詳細に計測・解析するために,MEG計測を行った被験者毎に脳磁界波形のピーク潜時を算出し.TMSを施行するタイミングを決定する. TMSの刺激時には,被験者の示指先端に3軸加速度センサーを設置し,関節運動開始を感知する.関節運動開始のトリガーはTMSパルスコントローラーに入力し,関節運動開始からTMSまでの刺激間隔を決定する.TMSの刺激部位は一次運動野手指領域とし,他動運動施行側の示指伸筋より運動誘発電位を記録し,解析する.末梢神経の電気刺激後35 msと100 msから200 msの間にTMSを行うと運動誘発電位が低下し(Sailer A et al, 2003),一方で末梢神経の電気刺激後60 msにTMSを行うと運動誘発電位は増加することが報告されている(Davanne H et al, 2009).これらの研究報告を考慮しながら他動運動時に得られた運動誘発電位を記録,解析を行うことで,他動運動における求心性入力が一次運動野の興奮性にどういった影響をもたらすかが明らかになり,他動運動による一次運動野興奮性変化の詳細がさらに明確になると考えられる.
|
次年度使用額が生じた理由 |
脳磁図の実験では非磁性体の機器を使用しなければならないため,特注で実験備品を作成する必要がある.今年度の実験では非磁性体の備品作成のために次年度使用額が生じたと考えられる.
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度の実験では,本学に設置してある経頭蓋磁気刺激装置を用いて計測を行う.また,次年度購入予定の刺激設定装置は予算内に収まる予定である.
|