目的は、健常者と脳血管障害患者における安静時の脳内神経活動とその機能的連関(Default mode network:DMN)を脳波にて検証し、さらに認知課題負荷により、課題後の安静状態ではDMNが変化しているかについて解明することである。これにより、脳活動を賦活する課題が、その後の安静状態の脳活動にまで影響するかが明らかとなり、認知機能の維持・改善に向けた介入方法の根拠となる。本研究は、認知機能の維持・向上に向けた介入方法創出のための基礎研究である。 平成26年度の健常者の測定において、脳波計測と脳イメージング解析によるDMNの検討可能性が示された。平成27年度は脳血管障害患者を対象に、安静状態および認知課題時の脳波計測を行った。脳イメージング解析の結果、安静時には内側側頭葉、下側頭回、内側前頭前野に高い神経活動を認めたが、それらの間に機能的連関を認めなかった。認知課題時には中前頭回に高い神経活動を認めた。認知課題後の安静時においても、脳内の神経活動部位間の機能的連関が認められなかった。このことから、脳血管障害患者ではDMNが変調を来していることが明らかとなった。DMNの変調は認知機能障害を引き起こすため、脳血管障害患者のDMN改善が認知機能維持・向上のために求められる可能性がある。また、認知課題時後の安静時においても、DMNに変化を認めなかったことから、単回の脳活動を賦活する課題ではDMNの改善が得られない可能性が示唆された。
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