研究課題
目的:慢性痛の多くは器質的な問題だけでなく心理的・社会的な要因,さらには,中枢神経系の変調が関与しあって,病態の悪化や痛みの増悪につながっていることが多く,集学的な痛み診療が必要である.これまでに,集学的診療によって,運動療法の適応があるかどうか判断してきたが,初期評価時に運動療法が効果的であるかどうか予測することは困難であった.本研究の目的は,慢性痛患者の初期評価時の脳活動が運動療法の治療効果を予測できるか検証することである.方法:対象は慢性痛患者(男性12名,女性23名,平均年齢50.1±113.8歳)とした.初診時及び初診から3ヶ月後に疹痛強度(VAS),疹痛生活障害評価尺度(PDAS),不安抑うつ評価指標で(HADS),破局的思考(PCS),QOL(EQ-5D)を評価した.また,初診時に脳波を測定し,各周波数解析,LORETA解析を行った.3ヶ月間運動療法を実施した患者の3ヶ月後に痛みが改善した群(痛みの改善率が20%以上)と改善しなかった群(痛みの改善率が20%未満)に群分けし,両群間で初期評価時のPDAS,HADS,PCS,EQ-5D,脳波における各周波数解析,LORETA解析の結果を比較・検討し,改善率に関与する因子を抽出した.結果:20%以上痛みが改善度した患者は14名で,20%以内であった患者は21名であった.初期評価時に両群間に有意な差を認めたものは,EQ-5Dのみであり,各周波数解析,LORETA解析の結果に両群に有意な差は認めなかった.考察:本研究結果から,運動療法の効果予測には,脳波,不安抑うつ,破局的思考よりも,QOLの包括的評価であるEQ-5Dが有効である可能性が示唆された.
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