研究課題/領域番号 |
26750210
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研究機関 | 広島国際大学 |
研究代表者 |
田中 亮 広島国際大学, 総合リハビリテーション学部, 講師 (50454880)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 変形性膝関節症 / 理学療法 / 疼痛 / 予後 / 臨床予測ルール / 破局的思考 / 自己効力感 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,理学療法では効果が得られない膝OA罹患者を事前に予測するための臨床予測ルール(CPR: Clinical Prediction Rules)の作成である.平成26年度に実施したシステマティックレビュー(Tanaka etal., 2015)の結果から,「疼痛の破局的思考」と「自己効力感」が膝OA罹患者の疼痛と関連していることが示唆されていた.そこで,本研究では破局的思考と自己効力感に注目して,それらの認知の強弱や高低と疼痛症状との関連を調査した.その結果,強い破局的思考と低い自己効力感を有す膝OA患者は,そうでない患者よりも,神経障害性疼痛に似た症状を訴える傾向が強かった.これにより,理学療法のみによる緩和が難しいと考えられる神経障害性疼痛と,破局的思考や自己効力感は関連している可能性が示唆された.次に,破局的思考による疼痛悪化のメカニズムを探るために,Fear-avoidanceモデルを使って,破局的思考が廃用や不活動を介して疼痛悪化をもたらすという仮説を検証した.パス解析の結果,モデルの適合度は高く,仮説はおおむね支持された.これにより,膝OA罹患者の強い破局的思考は廃用や不活動をもたらし,それらが理学療法による疼痛緩和を困難にさせるという仮説が想定できた.そして,縦断調査により,破局的思考の強弱や自己効力感の高低が理学療法による疼痛緩和に及ぼす影響を調査した.ROC曲線を用いた分析の結果,破局的思考や自己効力感といった認知的要因を組み合わせた検査結果は,1ヶ月後,3ヶ月後,および5ヶ月後の疼痛緩和の有無について高い感度および特異度を有していた.この結果から,理学療法では効果が得られない膝OA罹患者を事前に予測するためのCPRが得られた.今後は,CPRの簡略化を試み,その精度および妥当性を検討する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,3つの研究(研究1:システマティックレビュー,研究2:CPRの開発,研究3:CPRの妥当性検証)からなる.これまで研究1と研究2は予定通り開始できているが,平成27年度に予定されていた研究3は開始が平成28年度に延期された.その理由は,CPRの妥当性を検証するためにはまずCPRを開発しておく必要があり,平成26年度はCPR開発のための資料確保を優先したからであった.
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今後の研究の推進方策 |
研究3(CPRの妥当性検証)を開始する.研究3で使用する資料を確保するために複数の施設に研究協力を依頼する.研究協力施設および患者の負担を少なくするために,研究2(CPRの開発)の解析結果を基に測定項目の内容を見直す.十分な標本数を確保できないことが想定される場合,研究2と研究3で得られた標本を合わせ,CPR開発用とCPR検証用に分ける.
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次年度使用額が生じた理由 |
1)研究2のために依頼できた研究協力施設および患者数が予定を下回り,資料収集にかかる業務委託の費用が予定通り執行できなかったため.2)研究3を平成27年度に開始しなかったことから,それにかかる業務委託の費用を予定通り執行できなかったため.3)研究2の成果を報告するための学会参加および論文投稿の機会が得られなかったため.
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次年度使用額の使用計画 |
以下の費用として使用する予定である.1)研究2のデータに対して高度な解析を行うための業務委託の費用.2)平成28年度に行う研究3の資料収集にかかる業務委託の費用.4)投稿予定の論文の英文校正費および掲載料.4)学会の参加費,旅費.
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