研究課題/領域番号 |
26750211
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
蜂須賀 明子 産業医科大学, 医学部, 助教 (90646936)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | F波 / 反復F波 / ポリオ後症候群 / 運動ニューロン疾患 / 前角細胞機能 / 波形解析 |
研究実績の概要 |
研究課題である「ポリオ罹患者のF波波形解析によるポリオ後症候群危険予測指標作成と臨床応用」は、神経伝導検査の1つであるF波検査において、F波の波形多様性に着目した、簡便かつ非侵襲的な脊髄前角細胞の機能評価を開発し、ポリオ後症候群の危険予測や治療効果判定を行うことを目的とする。
1)ポリオにおけるF波の特徴に関する検討:ポリオ罹患者43名、健常者20名のF波計測より、ポリオ罹患者において、F波出現率の低下、反復F波占拠率の増加を明らかにした。また、反復F波は運動単位の定量法であるMUNEと相関を認めた。これらは世界初の知見であり、反復F波自体が運動単位数の減少を示唆し、ポリオの前角細胞障害を反映する指標となる可能性がある。更に追加して、反復F波の起源や多様性、神経筋の形態的な特徴等の検討を開始した。 2)ポリオ後症候群の危険予測指標に関する検討:危険指標作成に際し、1)に示す通り、臨床データ収集が進んでいる。H27年度以降、得られた臨床データを元に指標に組み込む項目を選定する方針である。また、これまでにF波の波形を自動解析するソフトはない。本指標の臨床応用を見据えて、工学系の研究協力者(九州工業大学 本田あおい准教授、大分大学 福田亮治准教授ら)と共同で、反復F波を自動解析する技術を開発中である。 3)成果の発信:上記成果について、本年度は3件の国内学会発表(うち1件は優秀ポスター賞受賞)を行い、1編の英文論文を投稿し採択、1件の波形解析に関する国内特許の申請、1件の全国患者会会報へ寄稿を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、ポリオ罹患者におけるF波の特徴を初めて明らかにした。これは本研究で用いる波形解析を含むF波検査が、ポリオの前角細胞機能を反映する指標として有用であることを示している。また、当初予定した項目について初年度内に一定の成果を得たため、更なる検討項目を追加し、危険予測指標やその臨床応用に向けた臨床データを収集中である。これらの臨床データを元に、F波波形解析システムに関連する技術も開発した。複数の国内学会発表(1件受賞あり)、英文論文投稿、特許申請、患者への広報など、多岐にわたる成果発信を行った。 以上より、本研究は順調に進展していると自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
臨床データの収集完了と、それをもとにしたポリオ後症候群の危険予測指標の作成、臨床応用に向けた準備を進める。 1)反復F波の起源や多様性の検討、神経筋の形態との比較 2) ポリオ後症候群の危険予測指標に組み込む項目の決定と危険予測指標の作成 3)F波によるポリオ後症候群の危険予測指標(前角細胞機能評価)の臨床検討、他疾患への応用
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度内に一定の成果が得られたため、成果の論文化経費(英文校正・投稿料)や、検討項目の追加計測に伴う謝礼等については、当初予算をやや上回った。しかし、計測が現有機器で想定以上に順調に進んだため新規の計測ソフトを購入せず、予定していた国際学会は日程が合わず不参加としたため、物品費・旅費は当初予算を下回った。総じて繰越が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
計測および統計解析に必要な消耗品(電極、ペースト、リード、ハードディスク等)、健常参加者への謝金、検査実施協力者への謝金、研究協力者との会議に関する旅費・会議費、国内外の学会発表に関する旅費、論文化経費(英文校正・投稿料)に使用する予定である。
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