研究課題である「ポリオ罹患者のF波波形解析によるポリオ後症候群危険予測指標作成と臨床応用」は、神経伝導検査の1つであるF波検査において、F波の波形多様性に着目した、簡便かつ非侵襲的な脊髄前角細胞の機能評価を開発し、ポリオ後症候群の危険予測を行うことを目的とする。
1.ポリオにおけるF波の特徴に関する検討:研究期間中、ポリオ罹患43名、健常者20名のF波計測を実施した。ポリオ罹患者において、F波出現率の低下・反復F波占拠率の増加と運動単位数推定との相関、反復F波の特徴(振幅・潜時等)、臨床重症度との関連を明らかにした。特に、反復F波占拠率は、一般的なF波指標であるF波出現率と比較して軽症群より異常を認め、ポリオによる神経障害を反映する早期指標となる可能性が示唆された。今後は、反復F波に着目した長期の観察研究が望まれる。 2.ポリオにおける神経筋の形態的特徴に関する検討:研究期間中、ポリオ罹患者24名、健常者15名の神経筋超音波による神経(正中神経、尺骨神経、頸部神経根、脛骨神経、腓骨神経、腓腹神経)及び筋(上腕二頭筋、大腿四頭筋)の形態的評価を実施した。ポリオにおいて神経根の断面積(CSA)の減少、筋厚の菲薄化、臨床症状との関連を認めた。 3.研究に関連した症例報告:ポリオや末梢神経障害の興味深い症例があり、筋電図や神経筋超音波を用いて検討を行い、学会発表や英文論文化を行った。 4.成果の発信:本年度は1件の英文論文採択・掲載、1件の和文論文の掲載、2件の国内学会発表を行った。その他、複数の論文投稿を準備中である。
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