研究課題/領域番号 |
26750214
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研究機関 | 創価女子短期大学 |
研究代表者 |
亀田 多江(米田多江) 創価女子短期大学, その他部局等, 准教授 (50363726)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 高齢者見守りシステム / インスリン療法 / タブレット端末 |
研究実績の概要 |
急増している高齢糖尿病患者に対して、認知症などによる在宅インスリン療法(自己注射)の中断・誤接種を防ぐための支援の充実が緊急の課題となっている。 今年度の研究では、高齢の糖尿病患者が、在宅インスリン療法を確実に継続できるように、「インスリン見守りシステム」のバージョン1を設計・開発した。システムは、注射器の格納容器にセンサーを付けて“容器の開閉”と“注射器の取出し”をモニタリングするシステムである。患者は、日頃から利用している注射器をセンサーを付けた格納容器(筆箱サイズ)に入れ、注射器を利用する際に容器を開閉・注射器を取戻しするだけで、センサー情報が一緒に設置するネットワークに繋がったタブレット端末を経由してサーバに送られ、分析・管理される。この情報は、医師・看護師・ケアワーカー・家族などがweb上で確認でき、患者のプライバシーを守る程よい距離の情報で、安価に見守ることができる。 システムを実際の高齢糖尿病患者に数週間利用してもらい、システムの検証を行った。今回は、実施対象患者は1名で、日中に3回(追加インスリン製剤)、就寝前に1回(基礎インスリン製剤)の注射を行っている女性の高齢患者であった。認知症は患っておらず、毎日決まった時間にほぼ確実に注射を打っていたため、システムの動作確認を行うことができた。また、注射状況がきれいに取得・表示させることができたため、医師や看護師に高評価であった。これにより、これまで把握ができていなかった在宅での注射器利用実態が確認でき、臨床現場で有効なデータとなることを確認した。 以上の研究成果は、国内の研究学会で2件、国際学術会議で1件発表を行い、国内外から高い評価を得た。また、査読が有る論文誌にも1件掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度に計画していた主な研究内容3点について、それぞれほぼ計画通り進めることができた。以下にその状況についてまとめる。 1)「インスリン見守り君ver.1」の設計と試作評価:インスリン見守りシステムの第1バージョンとして、“注射器の格納容器にセンサーを付けて開閉・取出しをモニタリングする”試作システムを設計・開発した。また、システムを試験運用し、機能が正しく動作することを確認した。更に、試験運用を通して得られた知見からセンサー情報表示画面の改良を行った。これらにより、予定した内容を概ね計画通りに進めることができた。 2)実際の患者への導入実施によるシステム検証:認知症を患っていない高齢患者を対象に数週間試験導入し、システムが現場フィールドでツールとして機能することを確認した。また、システム効果として、注射器格納容器の開閉情報と取出し情報が見える化されたことにより、医師がこれまで確認することが不可能であった患者の自宅での治療状況が確認できたことで、医師より高い評価を得ることができた。ロボットによる注射の誘導と支援の必要性の検証については、システム検証時にヒアリングし、音声による誘導、また音声をやり取りする対象となる形(ロボット)がある方が好ましいことを確認した。これらにより、予定した内容を計画通りに進めることができた。 3)研究成果の発信:システムのアイデアと試作評価について、国内の研究学会で2件(M2M研究会教育専門部会セミナー、日本遠隔医療学会学術大会:優秀論文賞受賞)、国際学術会議(国際遠隔医療学会: ISfTeH)で1件発表を行った。また、論文誌(日本遠隔医療学会学術論文誌:査読有)に1件掲載された。これらにより、予定した内容を計画通りに進めることができた。 以上、主な研究内容3点がそれぞれ概ね計画通りに進められたことから、「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度には、次の3点について研究を進める計画である。1)「インスリン見守り君ver.2」の設計と試作評価:提案システムの第2ステップとして、インスリン見守り君ver.1にロボットによる注射の誘導と支援を想定した音声を実装した試作システムを設計する。平成26年度の試作システムの実施評価において、システムで使用する音声として担当医師や看護師の声を使うことが提案されたので、その提案も生かしていく。また、試作システムを試験運用し、機能が正しく動作するかどうかの評価・改善と音声情報表示画面の改良を行う。2)実際の患者への導入実施によるシステム検証:高齢患者複数人を対象に試験導入し、システムが現場フィールドでツールとして機能するか、また、注射器格納容器の開閉情報と取出し情報と音声支援の効果を確認する。更に、形があるロボットによる支援の必要性と効果を検証する。3)運用方法の検討・試行:導入前の患者と医師・看護師の連携方法からシステム導入時にどのような連携状況に移行するかを試験導入しながら検討・試行する。 平成28年度には、次の3点について研究を進める計画である。1)「インスリン見守り君ver.3」の設計と試作評価:提案システムの第3ステップとして、インスリン見守り君ver.2にロボットによる注射の誘導と支援を実装した試作システムを設計する。また、試作システムを試験運用し、機能が正しく動作するかどうかの評価・改善と音声情報表示画面の改良を行う。2)実際の患者への導入実施によるシステム検証:高齢患者複数人を対象に試験導入し、システムが現場フィールドでツールとして機能するか、また、注射器格納容器の開閉情報と取出し情報とコミュニケーションロボットによる誘導・支援の効果を確認する。3)運用方法のモデル化:多種多様な環境にある患者へのシステム導入・運用状況と結果をまとめ運用方法のモデル化を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度の経費のうち、その他に計上していた「システム開発委託費」約400,000円が平成27年度に繰り越された。これは「インスリン見守り君ver.1」の開発がまだ完了していないため、支払いが次年度に繰り越されたものである。具体的には、一人の患者のデータ管理についてはシステム開発は完了しているが、複数患者への対応部分が残っており、その部分の開発が完了し次第、支払いを行う予定である。なお、今年度の研究計画については、実施実験は一人の患者のみを対象にシステム導入したため、概ね予定通りに進んだ。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年8月末までに、開発が残っていた複数患者への対応が完了する予定であるので、完了次第、支払いを行う。
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