研究課題/領域番号 |
26750216
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研究機関 | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
研究代表者 |
酒井 奈緒美 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 感覚機能系障害研究部, 研究員 (60415362)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 吃音 / 成人 / 質問紙 / ICF / 評価法 |
研究実績の概要 |
成人吃音を包括的に評価する質問紙を作成し、支援につなげることを目指し研究を進めた。昨年度は、質問紙の作成、調査の実施、一部のデータ分析(有効回答数102)まで進めた。今年度は、さらにデータ分析を進め、再テスト法による信頼性の確認、併存的妥当性や構成概念的妥当性の検討を行った。質問紙の施行間の相関は、各セクションにおいて r = 0.67~0.89 となり、概ね信頼性があると判断された。妥当性については、質問紙の各セクションが改訂版エリクソン・コミュニケーション態度尺度(S-24, Andrews & Cutler, 1974)や自身の発話に対する10段階評価(SAスコア, Huinck & Rietveld, 2007)と有意に相関していること(r = 0.4 ~ 0.82)、また、セクション間の相関よりセクション内の内的整合性が高い値を示していることを示し、併存的妥当性、構成概念的妥当性を確認した。内的整合性が低かった下位セクション(α = 0.44)については、別のセクションへ項目を移すなどの調整を行い、臨床場面にて実施可能な形とした。さらに、102名の対象者に対してクラスター分析を実施し、吃音のある成人を類型化できる可能性を示した。 質問紙を実際の臨床場面へ導入するため、各項目、下位セクション、セクションに対応する形で、現行の吃音治療・支援法を整理した。吃音臨床の歴史において古くから使用されている流暢形成法や吃音緩和法に加え、認知行動療法の要素を取り入れた。 完成した質問紙を実際の臨床場面へ導入し、治療・支援を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では、1年目に評価法(調査用紙)を完成させ、2年目に実際の支援をある程度終了させる予定であったが、質問紙の完成が2年目に達成されたことで、臨床応用の開始が多少遅れた。その結果、臨床介入が3年目も続く予定である。しかしながら、3年目の前半には介入を終え、後半に介入終了者に対する面接調査とその分析を実施できると見込んでいるため、概ね順調であると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
1.評価法の結果に基づいた支援の実施 前年度から引き続き、臨床場面における評価法(質問紙)の実施と、それに基づく臨床的介入・支援を実施する。 2.症例に対する質問紙の有用性と治療効果の測定 臨床的介入・支援が終了した症例、あるいはある程度の改善が認められた症例について、終了時あるいは改善が認められた時点で、面接調査を実施する。面接調査結果に対し、質的なデータ分析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、謝金・人件費として予算を立てていた分について、臨床研究対象者に関しては診療内での実施となるため謝礼が支払われないこと、また統計処理作業をアルバイトに依頼する予定であったが、作業を研究者自身が担当したことから次年度繰越が発生した。次年度にいくつかの学会、セミナー参加を予定していること、また面接調査の分析(逐語録作成のアルバイト)に対する人件費が必要であることから、あえて次年度に繰り越している。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度はデータ整理・分析に掛かる物品費・人件費、学会・セミナーへの参加費・旅費、学会発表にて映像呈示に使用するタブレット型パソコンの購入等に、繰越分を充てる予定である。
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