研究課題/領域番号 |
26750216
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研究機関 | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
研究代表者 |
酒井 奈緒美 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 感覚機能系障害研究部, 研究員 (60415362)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 吃音 / 成人 / 評価法 / 質問紙 / ICF |
研究実績の概要 |
平成28年度の研究計画では、平成27年度までに作成した成人吃音を包括的に評価する質問紙を臨床場面に導入し、その評価に基づいて実施した介入の効果を質的に分析する予定であった。実際に5名に導入し臨床的介入を行ったが、①質問項目が多く実施に時間がかかるという質問紙自体の問題、②介入の進捗やケースの個人的事情で介入効果の分析まで到達しないという研究遂行上の問題が生じた。加えて、評価法に基づく介入方法が多岐に渡り複雑であるため、介入効果の分析が困難であることが、介入を進める中で明らかとなった。 まず①の問題に関しては、他の評価法と重ならない項目のみをピックアップし、質問紙の縮小化を目指すこととした。海外で広く使用されている包括的評価法 (Overall Assessment of Spearker's Experience of Stuttering; 0ASES, Yaruss& Quesal, 2010) の日本語版が完成し、日本のデータが示されたことから(Sakai et al., 2017)、OASESを成人吃音の評価法の軸と考え、OASESと本研究で作成した質問項目との関連を調べた。その結果、OASESにて測定される現在の吃音による困難度は、本研究の一部の質問項目(これまでの経験等)が中程度(r = 0.4以上)に関連していることが示された。次年度で質問紙を構成し直す予定である。 ②の問題や介入方法の複雑さの問題については、介入内容をパッケージ化した短期のグループセラピーを実施することで解消できると考え、次年度の課題とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
他の研究課題(日本医療研究開発機構の助成金によるプロジェクト)の業務量が多く、本研究課題の進行が遅れた。また、本研究実施中にいくつかの問題が生じたこと、加えて他の研究結果(海外既存の包括的評価法の日本語版作成後、日本人データの妥当性・信頼性が確認された(Sakai et al., 2017))が示されたことから、目標を補足的な評価法の作成にするなどの研究計画に変更が生じた結果、進捗が遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
進捗が遅れているため、期限を延長して計画の変更を行った。平成29年度の計画は下記の通りである。 ①昨年度の分析結果を元に質問紙を構成し直す ②短期集中型のグループセラピー(認知行動療法的介入)の介入前に本研究の質問紙、既存の質問紙(OASESなど)を実施する。 ③介入終了後に、OASESなどの既存の質問紙や自由記述を含むアンケートなどで介入効果の測定を行う。 ④介入前の本研究の質問紙の結果と、介入効果の関連を分析し、どのような特徴(例えば経験)を持つ成人に、どのような介入が有効であったかを示す。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度開始の日本医療研究開発機構の助成金による研究プロジェクトの業務量が予想以上に大きく、本研究の遂行に遅延が生じたため、未使用の研究費が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度の進捗が遅れた状況を受け、研究計画を変更した。それに基づき、研究費の使用計画を以下に変更する。 ①本研究で作成した質問紙と海外既存の質問紙(日本語版の作成について論文化済み)との関連を明らかにし、国際学会で発表するため、渡航費として使用する。②①の結果をもとに構成し直した質問紙を、成人吃音の短期集中訓練導入前の評価法として使用する。介入効果との関連を分析し、どのような症例にどのような介入が効果的であるかを分析する。これらの症例に対する研究協力の謝金として、また介入研究に必要な物品費として、研究費を使用する。
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