研究課題/領域番号 |
26750217
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研究機関 | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
研究代表者 |
越智 景子 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 感覚機能系障害研究部, 客員研究員 (20623713)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 吃音 / 言語訓練 / 軟起声 |
研究実績の概要 |
吃音は、音や語の一部の繰り返し・引き伸ばし、発話が開始や継続ができなくなる阻止といった中核症状のある言語障害である。 言語訓練で一般的に用いられている流暢性形成は発話速度をゆっくりに調整することや、軟起声とよばれる立ち上がりが柔らかな楽な発声などを習得するであるが、訓練施設で行う治療者と対面での練習以外に、自宅でも日常的に練習を行うことが欠かせない。しかし、練習者自身が発声が適切かどうかを判断することは困難であると考えれる。そのため、訓練音声の自動評価やモデル音声の提示が有効であると考えられる。 本研究では、吃音の言語治療である流暢性形成法の自宅練習を行いやすくするために、とくに軟起声の発声に着目し、練習者ができているかどうかを自動評価し、訓練するシステムを開発することを目指す。平成26年度では、訓練音声が軟起声かどうかを音響的特徴量から自動判別する手法を開発した。従来は軟起声の音声波形の振幅が緩やかに増加することを利用して声立ての立ち上がりにかかる時間が評価基準として用いられてきたが、ここでは硬起声に比べ軟起声の発声時には倍音成分が相対的に小さいことに着目し、基本倍音と第2、第3倍音の振幅比と、周期性の強さを使って判別することを提案した。それによって言語聴覚士の軟起声、硬起声が良好に判別できることを示した。さらに、治療者ではない非吃音者、吃音者の通常発声、および軟起声を想定した発声を収集し、各音響的特徴量の分布が提案する言語聴覚士の発声をもとにした判別手法が有効であることを示した。また、発話練習のモデル音声として自然な音声合成が有効と考えられるため、さまざまな速さや強調の音声の韻律的特徴を分析し、音声合成につながる知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
軟起声の自動判別手法についてはその有効性を示すことができた。提案する軟起声の自動判定手法に基づく訓練のさいの自動判別結果の提示方法について、また母音以外発声についても対応する判別手法について研究を進めている。また、短期的な訓練効果について予備的な検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
軟起声についてその自動判別手法を開発した。今後は、自動判別結果を視覚的にフィードバックすることにより発話者の言語訓練を行うシステムを開発する。被験者事件により自動判別結果の効果的な提示方法を検討する。さらに、吃音者を被験者とし、その訓練システムによる訓練効果を検証する予定である。また、軟起声では通常発声に比べ音量が小さくなることが考えられるため、練習発声の音量を視覚的にフィードバックすることによる訓練効果も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまで、軟起声の自動判定の手法を開発し、その訓練効果について予備的検討を行ってきた。訓練効果を調べる際は被験者に貸し出すための複数台のパーソナルコンピュータが必要となるが、現段階では貸し出し実験を行っていないため、来年以降にパーソナルコンピュータを購入する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
言語訓練システムを搭載したパーソナルコンピュータの貸し出しによる長期訓練の効果の検証を行うため、パーソナルコンピュータおよび録音用マイクを購入する。また、評価実験のため、被験者謝金を支出する。研究成果発表として日本音響学会、日本音声言語医学会での発表、雑誌論文への投稿を予定しているため、研究発表費用が必要になる。
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