研究課題/領域番号 |
26750222
|
研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
川中 普晴 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30437115)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 認知症評価 / 会話型ロボット / リクリエーション / 時計描画テスト / 特徴抽出 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,簡単な日常会話ができるロボットを用いたロボットセラピーにおいて,ロボットとの会話内容や動作を用いて,高齢者の認知症のタイプや進行度を定量的に評価するシステムについて研究開発を進めた.ここでは,申請者がこれまでに研究してきた「日常会話の内容を認識する技術」,「日常会話を用いた認知症の進行度評価法」,「認知症評価ための会話誘導技術」を活用するし,市販されている会話型ロボットを用いて,日常会話やリクリエーションから被験者に意識されることなく認知症進行度を計測・評価のためのシステムの一部について試作システムを開発した.特に今年度は,ユーザによって描かれた文字や図形から認知症を評価する方法として,主に時計描画を用いた認知症評価に関する研究を進めた.
【1.時計描画テスト用のシステムの試作】タブレットPCやタッチディスプレイ上に高齢者が描いた時計の絵から認知症の進行度を評価するために,タブレットPCを用いたシステムとモバイル端末(タブレットPC)を用いたデータ収集・評価用のシステムを作成した. 【2.時計画像からの特徴抽出方に関する検討】描かれた時計の絵の特徴から認知症の進行度やタイプを判定するための特徴抽出方と判別関数に関して検討した.ここでは,時計画像に対して,加重方法指数ヒストグラム法,画素の分布,直線成分を用いた特徴抽出方について検討し,その有効性について検討した.
本年度の研究成果は,日本知能情報ファジィ学会の全国大会(ファジィシステムシンポジウム)や電気電子情報関係学会連合大会,関連する国際ワークショップなどで発表した.また,本研究の内容を国際的に発展させていくために,英国カーディフ大学のグループとも共同研究を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は,申請者らがこれまでに研究開発してきた成果を活用し,会話型ロボットとの日常会話から認知症の進行度を評価するシステムの一部として,時計描画を用いた認知症評価システムに関して検討した,またそれとともに,これまで開発してきたシステムの拡充も行っており,研究計画に大きな遅れは生じていないと考える. 作成したシステムは,実際の福祉施設(今年度は主にデイサービス施設を活用)にてリクリエーション時間や自由時間内に使用されており,実運用に向けて現場担当者からの聞き取り調査とシステムの改良も進めている段階である.施設利用者にとっても,新しいリクリエーションコンテンツとなるため,施設側にとってもメリットは大きい.施設側スタッフからもおおむね良好な印象が得られており,試作したシステムの現場での利用性についても研究は進んでいると考える. また,描かれた時計の絵の特徴から認知症の進行度やタイプを判定するための特徴抽出方と判別関数に関する検討を行った.ここでは,申請者等が保有する技術の有効性について,実際の時計描画データを用いた評価実験を行っており,その有効性についても示されている.また本研究内容に関しては,英国カーディフのカーディフ大学のチームと共同で研究プロジェクトを立ち上げるに至った.カーディフ大学においても時計描画テストに関する研究を進めており,今後は相いに情報交換を行いながら時計描画テストのシステムを開発していくこととなっている.本内容に関する研究成果は国際会議と国際雑誌に発表する準備を進めており,以上のことを勘案すると,本研究プロジェクトの進捗状況は順調であると考える.
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度以降は,引き続き開発したシステムを県内の介護福祉施設数ヶ所に展開し,システムの使用感等について実証実験を進めていく予定である.また,実験結果から開発してきたシステムの問題点や改善点を明確化し,介護現場での恒常的利用を目指した改良を進めていく.評価実験と並行して,図形や文字から認知症のタイプや進行度を評価する機能も実装する予定である.介護施設に入所している高齢者の協力のもと,高齢者の日常会話音声コーパスの作成も進めていく.そのための倫理委員会申請の準備も進める.また昨年度に引き続き,時計描画を用いた認知症評価方法について,英国のカーディフ大学と共同で研究を進めるとともに,成果を国際会議や論文にて公表する.また,これらの研究成果を活用し,時計に加えて図形描画を用いた認知症評価についても検討していく.
|
次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は,時計描画をもちいた認知症評価システムについて,タブレットPCを用いたシステムの試作と評価実験の準備に予想以上の準備を要したこと,またシステム開発用に市販で購入した会話型ロボットを研究開発用に分解・改造する必要が出てきたため,その作業に時間を要してしまい,結果として一部の機材を購入できない状況となってしまった.
|
次年度使用額の使用計画 |
研究自体は順調に進んでいるため,次年度には使用する予定である.研究課題内容に関する大きな変更などは考えていない.
|