現在,認知症を患った高齢者の数は増加傾向にあり,認知症の早期発見とその予防は重要な課題である.一般的に,認知症の進行度を評価するには,長谷川式簡易知能評価スケールやミニメンタルステート検査(MMSE)を用いて時間的・空間的見当識や短期記憶を評価する.またMMSEでは,対面式のテストに加えて重なり合う五角形を描く図形描画テストも取り入れられており,空間把握能力や実行機能障害についても評価することができる.しかしながら,図形描画テストの実施においては,重なり合った五角形を描くことが難しい,経過観察のためには定期的な実施が必要となるため実施者の負担となる,評価者の経験や知識に評価結果が大きく依存するといった問題も指摘されている. そこで本研究では,日常会話やレクリエーションから被験者に意識されずに認知症の進行度を計測・評価する方法について検討を進めた.平成28年度は昨年度から引き続き,平成26年度に作成した時計描画テスト用のシステムを用いて,県内の介護福祉施設と協働してデータの収集と開発したシステムの評価を行った.またさらに,時計描画テストに加えて四角・三角・丸といった単純な図形の組合せを用いて認知症進行度を評価するための新たな図形描画テスト法についても検討した.ここでは研究の第一段階として,図形を用いた認知症評価のための形状認識に用いる特徴抽出法について基礎的検討を行った.さらに3次元計測センサによる表情認識法を活用したレクリエーションコンテンツの開発も進めるとともに,システムの使用感に関する検討を行った. 本年度の研究成果は,電気電子関係学会東海支部連合大会や映像情報メディア学会の全国大会,さらには地域イノベーションに関する国際ワークショップなどにて,その内容を発表した.
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