本研究では,(1)コミュニケーション時における瞳孔反応モデルの開発・評価,(2)「瞳孔反応ロボットの開発・評価の検討を進めた. (1)では,視線計測デバイスを用いて,コミュニケーション時における瞳孔反応の変動を計測・解析した.具体的には,2人1組のコミュニケーションを対象として,一方から他方へのコミュニケーションと双方向に行われるコミュニケーションにおける瞳孔反応を解析した.とくに,対話者間に仕切りを配置して,非対面コミュニケーション時における瞳孔反応も解析した.その結果,対面・非対面の状態に拘らず,話し手の瞳孔反応は通常時と比較して約1.5倍程度拡大することが示された.また,聞き手の瞳孔反応は通常時と同程度であることが示された.さらに,双方向コミュニケーションでは,話し手と聞き手が入れ替わるため,通常よりもやや拡大することが示された.次に,音声と瞳孔反応との時系列関係を解析した.その結果,音声の音圧が通常よりも高い状態の場合,拡大した状態の瞳孔反応との正の相関関係が強まることが示された.これらの結果に基づいて,発話音声から瞳孔反応を自動生成するモデルを開発した. (2)では,上記にて開発したモデルを適用し,CGキャラクタが瞳孔反応を行うコミュニケーションシステムを開発した.コミュニケーション実験を行った結果,瞳孔反応を表現することで,「対話しやすさ」や「熱意の伝わりやすさ」が向上する等,システムの有効性を確認した.次に,半球ディスプレイを用いた瞳孔反応インタフェースを開発した.このインタフェースは,ディスプレイにCGの瞳孔のみを表示しており,CGが発話音声に基づいて動作することで,瞳孔反応を生成する.このインタフェースを用いてコミュニケーション実験を行った結果,瞳孔反応を表現することで,「対話しやすさ」や「共感しやすさ」が向上する等,インタフェースの有効性を確認した.
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