研究課題/領域番号 |
26750228
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
越地 福朗 東京理科大学, 総合研究機構, 客員研究員 (00610445)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ボディエリアネットワーク / ウェアラブル機器 / 共振結合 / 磁界 / コイル / アンテナ / 人体 / 生体 |
研究実績の概要 |
本研究は,医療・ヘルスケアのためのボディエリア通信における磁界励振型の送受信アンテナコイルによる人体周辺通信の信号伝送特性を,電磁気学的および電気回路理論的見地から,定性的,定量的に明らかにすることを目的とし,最終的には,姿勢変動を含む送受信アンテナ間の伝送特性,電磁界分布について明らかにし,アンテナコイルの設計手法,および,アンテナおよび人体(生体)を含めた電磁界共振結合通信システムの設計手法の確立を目指している. 平成26年度は,人体とアンテナを含む伝送系を単純化した円柱状腕部モデルおよびMRI撮影データに基づく生体組織を詳細に再現したモデルの2種類を構成し,数値電磁界解析によって,送受信アンテナ間の電磁界分布,さらに電磁界の生体との相互作用の検討を行った.また,並行して生体等価ファントムを用いた実測による実験的検討を行った. その結果,数値解析によって得られる電磁界分布から,磁界励振型アンテナを用いることで,非磁性である人体の影響を受けにくく,送信アンテナから受信アンテナへと効果的に伝送可能であり,接触電極を利用する従来の電界励振型の人体通信よりも良好な伝送特性が得られることを明らかにした. また,MRI撮影データに基づく生体組織を詳細に再現したモデルと,腕部を単純化した円柱状筋肉均一媒質モデルを用いた場合の電磁界解析を行い,両者の伝送特性や電磁界分布結果が良く一致することを確認し,単純化した円柱状モデルによって,伝送特性や電磁界分布などの評価が十分可能であることを明らかにした. さらに上記結果をふまえて,生体等価ファントムを用いた伝送特性の確認実験を行ったところ,電磁界解析と良く一致する結果が得られ,本研究の妥当性・有効性が確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は,人体とアンテナを含む伝送系を単純化した円柱状腕部モデルおよびMRI撮影データに基づく生体組織を詳細に再現したモデルの2種類を構成し,数値電磁界解析によって,送受信アンテナ間の電磁界分布,さらに電磁界の生体との相互作用の検討を行っている.また,並行して生体等価ファントムを用いた実測による実験的検討も行っており,当初の研究計画どおり,順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
前年度の成果をもとに,日常生活での利用を想定した,より具体的な検討を行っていく.ウェアラブル機器を身につけて生活することを考えると,たとえば,手足は様々な角度に折り曲げられるなど,日常生活の中で,人体の様々な姿勢変動が想定される.こうした人体の姿勢変動などに対する送受信アンテナ間の伝送特性変動や伝送周波数特性,電磁界分布などを検討する.さらに,磁界励振型アンテナを用いたボディエリア通信は新しい通信方式であるため,人体の電磁波防護の観点から,人体近傍に配置される磁界励振型アンテナから放射される電磁波に対する生体安全性についても検討する必要がある.ここでは,生体安全性について,生体の電磁波エネルギー吸収率である局所Specific Absorption Rate (SAR)によって評価を行う.評価には,国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)によって定められた国際ガイドラインや総務省の定めるSAR制限値と照らし合わせて実施し,生体安全性の検討・確認を行う.これらの検討については,すでに所有している電磁界解析ソフトウェア(現有設備)などを有効利用して行う.また,必要に応じて,研究協力先である,東京大学や東京理科大学の研究設備も利用して行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
計画立案時に予定していた国際会議が,他の会議の依頼講演の日程と重なり,出張を見送ったため.
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に開催される同分野の国際会議における研究発表,情報収集のための出張旅費として利用する.
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