近年、多関節5指型筋電義手の開発競争が高まっており、各指の屈曲伸展・内外転動作および母指CM関節の対立動作、手関節の掌背屈・回内外・橈尺屈など、およそヒ卜が前腕で行うほとんどすべての精微な手指運動の再現が可能な筋骨格系の基礎技術と筋電制御の理論とコントローラ製造技術が確立されてきた。そしてわれわれは手先の運動を阻害しない柔軟な装飾用グローブの開発等をおこない、評価試験を行ってきた。今回、電気通信大学大学院情報理工学研究科横井浩史研究室を中心とした我々を含む研究グループによる外傷性上肢切断患者に対する「個々人に適応する学習機能を持った筋電義手」の臨床試験が始まった(URL: http://www.u-tokai.ac.jp/academics/undergraduate/medicine/news/detail/post_8.html)。具体的にはスマートフォンなどのタッチパネルを用いて教示されるワイヤレスの学習制御システムから構成され、数十秒の学習時間で手指の開閉や母指開閉などの動作を、個々人の筋電を使って教えることが個性適応型情報処理を可能にしたのだが、さらにこれに伴い、成人用筋電義手制作に向けて、肩離断患者用、上腕切断患者用に肘関節にも自由度を持たせ、肘関節屈伸、手関節(前腕)回内外、手指屈伸、計6運動を可能にした義手を製作し、当該患者に適応させた。また、この筋電義手の高機能化を受けて、微弱な信号や個人個人で異なる筋電の信号に対して個性適応機能を実装した筋電コントローラを内蔵することに加え、断端神経を効率良く残存筋に移行させて、その筋より筋電信号をとらせることで効率の良い末梢動作を筋電義手に与えるべく神経移行手術を上腕切断患者に施行した。現在術後経過を臨床機能評価、電気生理学的評価、ADL評価で追っているところであり、今後さらに症例を重ねる予定である。
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