研究課題/領域番号 |
26750232
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
楠本 泰士 東京工科大学, 医療保健学部, 助教 (60710465)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 脳性麻痺 / 痙直型 / 下肢随意性 / 信頼性 / 妥当性 |
研究実績の概要 |
痙直型脳性麻痺患者における下肢随意性の評価法としてSelective Control Assessment of the Lower Extremity (SCALE)が開発され、SCALEと歩行時遊脚期の股・膝関節との動きの関係について、いくつか報告されている。しかし、日本において、脳性麻痺の下肢随意性の評価指標はない。そこで本研究では、日本の痙直型脳性麻痺患者に対する下肢随意性検査として、SCALEの信頼性と妥当性を検証することを目的とした。 SCALEの翻訳は国際基準に則り行い、制作者の承諾を得てから順翻訳、逆翻訳、統合作業を行った。完成した日本語版SCALEを用いて検者内信頼性(ICC1.1)と検者間信頼性(ICC2.1)を測定した。対象は粗大運動能力分類システム(GMFCS)にてレベルⅠ~Ⅳの痙直型脳性麻痺患者とした。検者内信頼性の測定は、痙直型脳性麻痺患者18名(平均14.7歳、6~35歳)を対象とした。検者間信頼性の測定は、痙直型脳性麻痺患者18名(平均12.6歳、7~28歳)を対象とした。収束的妥当性の検証は、痙直型脳性麻痺患者37名(平均15.1歳、6~35歳)を対象とした。SCALEとGMFCSとの相関関係をSpearmanの相関係数を用いて検証した。 ICC1.1は、両下肢の得点を合わせたSCALE全体の値は0.93だった。ICC2.1は、両下肢の得点を合わせたSCALE全体の値は0.92だった。収束的念妥当性の検証では、対象者のGMFCSレベルはⅠが11名、Ⅱが9名、Ⅲが9名、Ⅳが8名だった。Spearmanの相関係数は-0.92だった。 SCALEの高い信頼性と妥当性が確認された。痙直型脳性麻痺患者における下肢随意性検査が一般化されることで、縦断的な調査により下肢変形の程度とSCALEとの関係が明らかになれば、予防的な介入や整形外科的治療の一助となると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SCALEの翻訳や信頼性の獲得における対象者の収集に時間がかかったが、信頼性と妥当性の報告として、現時点で論文投稿中である。おおむね順調に進行している。 第二、第三研究として、対象者の募集と計測を順次行っている。
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今後の研究の推進方策 |
第二研究である最大等尺性筋力と動作時発揮筋力との比較検討は、膝進展筋力と歩行時に働く最大筋力とで行い、計画通りに計測していく。第三研究では立ち上がり運動による機能的トレーニングと負荷抵抗トレーニングによる効果の違いについて検証予定であった。しかし、第一研究をさらに発展させるためにも、下肢随意性の向上や脳性麻痺患者特有のゆっくりとした動作の困難さの改善を目的とするため、第三研究での介入方法を立ち上がり動作の運動リズムの違いによるトレーニング効果に変更する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
第二研究と第三研究の開始が遅れたため、実験費として平成26年度分に予定していた被験者への謝礼の支払いがなく、実験機材の購入が遅れた。そのため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は早々に対象者を募集し、随時実験を行っていく。平成27年度の使用計画は、第二・第三研究における被験者謝礼と研究協力をして頂く学生への謝礼、実験に必要な備品の購入、実験機材の輸送費、実験報告にかかる翻訳代、論文投稿料などに使用する。
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