平成26年度には、痙直型脳性麻痺患者における下肢随意性の評価法であるSelective Control Assessment of the Lower Extremity (SCALE)の翻訳作業を行い、日本語版SCALEの信頼性・妥当性を55名の脳性麻痺患者(6歳~35歳)を対象に検証した。 平成27年度には、痙直型脳性麻痺児における速度の異なる負荷立ち上がり運動(sit to stand:STS)が歩行時エネルギー効率に及ぼす影響を検証した。粗大運動機能分類システムⅠ~Ⅲの歩行可能な16名を、ゆっくりな速度の立ち座り群(低速群8名、平均年齢16.0±2.2歳)と任意の速度の立ち座り群(任意群8名、平均年齢15.0±2.2歳)に割り付けた。運動介入はリュックに重りを入れての負荷STSを行った。負荷量は立ち上がりの最大負荷量(1RM)を測定し、30%1RMとした。低速群の動作速度は5秒で立ち上がり5秒で着座し、任意群は任意の速度とした。10回×4セットの運動を3~4回/週、6週間実施した。介入前後で最大等尺性膝伸展筋力、SCALE、6分間歩行距離(6-minute walk distance;6MWD)、歩行時エネルギー効率(physiological cost index:PCI)を測定した。介入前後に6MWDは主効果を認め、PCIは速度の違いと介入前後との間に交互作用が確認された。今回、単関節運動である膝伸展筋力やSCALEは両群改善しなかった。一方、低速群では6分間の最大歩行距離や歩行時のエネルギー効率を表すPCIが改善した。脳性麻痺児へのゆっくりとした速度での負荷STSは、動作時筋力や下肢協調性を改善させ、歩行時のエネルギー効率を改善させる可能性が示唆された。
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