研究課題/領域番号 |
26750233
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研究機関 | 東京医療学院大学 |
研究代表者 |
内田 学 東京医療学院大学, 保健医療学部, 准教授 (80531475)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 脊髄小脳変性症 / 呼吸機能 / 嚥下時無呼吸 / 咳嗽力 |
研究実績の概要 |
脊髄小脳変性症における誤嚥の発生パターンについて検討した。正常者では、呼吸機能を調整するcentral pattern generatorのリズム形成に加えて嚥下のタイミングで嚥下時無呼吸状態を作らなければならない。脊髄小脳変性症においては、呼吸と嚥下のタイミングが崩れており、67%の嚥下が吸気相に実施されていた。これらは、本来存在する防御反応を誘発し咳嗽反射が出現する誘因となってしまっている。呼吸と嚥下の調整は吸息性前運動ニューロンとSwallowing-related neuronsがほぼ同期する部位に局在する事から改善が困難となっていることが想定される。脊髄小脳変性症に関しては特異的に出現する運動失調も大きな制限因子となっている。四肢、体幹の運動失調に加えてオーラルジスキネジアなども口腔内の移送を制限しているものと推察されている。 介入方法として呼吸リハビリテーションを実施した効果を検討した。呼吸運動と嚥下のタイミングが同期しにくい疾患であるが、誤嚥が生じた際にも防御的な咳嗽を出現させる必要がある。咳嗽を効果的に引き出す為に必要な機能性として、胸郭の柔軟性と呼気筋力の発揮であるが、この両面の改善として表される指標は肺活量である。肺活量が保障される事で肺胞には長さー張力曲線として爆発的な強制呼気が可能となる。この力が誤嚥時の咳嗽力を増加させることになるという仮説のもと、介入効果について検討した。呼吸リハビリテーションとして、1.リラクセーション、2.肋間筋ストレッチ、3.吸気筋トレーニングを実施した。介入期間は60日であり介入前との前後比較を実施するとともに、非介入群との群間比較を実施した。前後比較では咳嗽力とした指標の最大呼気流速や肺活量が有意に増加し、食事摂取時の誤嚥の発生が36%減少した。非介入群との群間比較では、呼吸機能と摂食機能の全てが有意に改善していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に沿った測定が進められている。若干、対象者のレベルダウンなどが発生したため、予定していた測定人数には到達していない。また、各地区での測定も未完遂であることから、最終年時に併せて測定を終了させる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の介入効果では、脊髄小脳変性症患者における誤嚥の発生を予防させるプログラムとした呼吸リハビリテーションの役割について検討できた。更に、呼吸機能と上下肢、体幹の運動機能、また咀嚼や舌運動などの口腔機能との関係性についても検討していく必要がある。これらが次年度の課題である。 最終的に、呼吸機能と口腔機能(咀嚼、舌運動)の関係性について検討していく予定である。呼吸運動の中で実施する咀嚼の回数、時間、舌運動の機能性を評価した中で嚥下がどのタイミングで発生するのかについて検討しなければならない。呼吸リハビリテーションの介入効果は、酸素化能にも影響を与える事から咀嚼や嚥下で乱される呼吸パターンの中でもある程度の定常化を図れる物と推察している。この機能性について、表面筋電図学的解析による咀嚼機能と、超音波画像診断装置を用いた舌運動と実際の嚥下機能について検討する。介入群における群内の前後比較で変化量を測定し、非介入群との群間比較により誤嚥に対する呼吸リハビリテーションの予防効果を明確に示す予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の測定対象であった鹿児島県、北海道の対象者が誤嚥性肺炎を発症し、長期間の入院を余儀なくされていた。これにより、測定スケジュールが遅れてしまった事が原因である。遠隔地への旅費、宿泊費、試料費などが発生しなかった事に寄る残額である。
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次年度使用額の使用計画 |
鹿児島県、北海道で合計7名の対象者を予定していた。次年度も、研究協力を依頼し続け、体調の回復を待ちながら随時測定を実施していく予定である。
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