研究課題/領域番号 |
26750236
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研究機関 | 和歌山工業高等専門学校 |
研究代表者 |
津田 尚明 和歌山工業高等専門学校, 知能機械工学科, 准教授 (40409793)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | リハビリテーション / 福祉工学 / 松葉杖歩行訓練器 |
研究実績の概要 |
本研究では,松葉杖使用者の歩行中の転倒の可能性を予測し,可能性が高ければその可能性が減少するように警告・教示する訓練システムを開発する.そのためには身体の加速度を得ることが欠かせない.これまで開発したシステムや既存の歩行解析研究で用いられている方法では,センサを松葉杖や歩行者の身体に取り付けたり,複数カメラから成るモーションキャプチャシステムを使う必要があるなど大がかりであった. 本研究でこれまで,松葉杖歩行中の下肢,特に大腿の振れ具合と体幹の加速度の間に相関があることが分かっていた.そこで平成27年度は,この傾向に基づき大腿の動作のみ計測することで身体加速度を推定できることを実験で確認した.ここでは,既存の加速度センサ等も併用しながら松葉杖歩行を計測し,その信憑性を確認した. 更に本研究では,安価に市販され,小型軽量で取り扱いも容易なMS-Kinectセンサで歩行動作を計測することを提案し,身体加速度の推定を目指した.このセンサの計測領域は狭かった(奥行き4m)ためセンサを移動ロボットに載せて歩行者に伴走するように移動させ,歩行動作を計測する(付き添いロボット)方法を提案した.この「付き添い」機能のために,パソコンから随時制御できるなど研究用途で使いやすい掃除ロボットの派生品「ルンバ研究開発キット」を導入した.そしてこの移動ロボットにKinectセンサとパソコンを搭載して,実際に歩行中の松葉杖歩行者の身体加速度を推定した. 続いて,訓練を監視するための「見守り」機能を付加した.移動ロボット上のパソコンの画面にリアルタイムにメッセージを表示した.「ロボット」といってもその実体はなく,画面の中の存在であるが,患者に対して簡単な指示を発することができたので,患者にとっては「見守られているような」訓練が可能になった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
歩行中の松葉杖歩行者にリアルタイムに警告・教示するロボットの開発を目指し,これまで「見守り機能」と「付き添い機能」を開発した.被験者の協力を得た基礎実験を通して,このシステムが期待通りに動作することを確認した. 当初の計画以上に進展したため経費を前倒し請求して,当初は平成28年度に購入予定であったアイマークレコーダ(視線追尾装置)を購入した.今後はこれを用いて松葉杖使用者が歩行する時の視点移動について検証し,それをもとに効果的な「見守り」と「付き添い」のタイミングと位置関係を見いだす.
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今後の研究の推進方策 |
前年までに「付き添い」と「見守り」の2つの機能を連携させて1つのシステムとして機能するように仕上げたので,平成28年度はより実践的な実験を実施して,単なるシステムにとどまらないように実用性の向上を目指す. 付き添い機能に関しては,移動ロボットが歩行者からどれくらいの距離を離れて伴走すれば正確に歩行動作を計測できるのか,どれくらいの速度で伴走すれば歩行訓練に効果的なペースメーカとして機能するのかを,実験で検証する.実験では,被験者を募って複数パターンの歩行を指示し,その歩行動作を計測して検証する. 見守り機能に関しても同様に,どのタイミングでどのようにアドバイスすれば効果的なのかを実験で検証する.現在は歩行者の歩幅の変動について警告・教示しているが,それで十分かどうか検証する.同時に,被験者の視点がどのように動くのかをアイマークレコーダで計測し,同時に多機能バイオセンサで心拍数・脈拍などの生体情報も計測する.この段階では,実際に病院などに専門家を訪ねるなどして,一般的なリハビリテーション動作中の患者の視点の動きや生体情報を計測し,結果を参考にしながら仕上げる予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
計画よりも研究が進展したため,平成28年度に購入予定だったアイマークレコーダを前年度に購入した.その際,アイマークレコーダの市場価格をもとに必要額を試算して,余裕を見て前倒し請求した.しかし実際には,想定していたよりも安価に購入できたため,想定外の残金が発生した.
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次年度使用額の使用計画 |
上記理由により発生した残額を有効活用するために,当初は計画していなかった学会や論文誌などでの成果発表を計画している.
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