研究課題
ヒトの持つ運動学習能力はスポーツ場面やリハビリの場面に限らず、日々の生活を送る上でも欠かせない能力であり、その神経基盤を解明していくことは神経科学や身体運動科学分野における重要な課題の一つであるといえる。本研究では機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて、運動学習時の脳活動を全脳から計測し、運動学習に関わる脳活動パターンを明らかにしていくことを目的としている。昨年度は運動学習に関わる脳活動についてfMRIを用いて計測し単変量解析により検討を行った。本年度は、脳活動パターンの解析手法を確立するため、被験者が左(または右)の手首の屈曲(または伸展)運動を行っているときの脳活動をfMRIにより計測した。そして、複数のボクセルパターンを用いる多変量解析の一つであるRepresentational Similarity Analysis(RSA)の手法により、各運動条件時の脳活動の類似性について系統樹や多次元尺度構成法により評価を行った。その結果、系統樹では左右の動作の違いでまず分かれ、ついで屈曲伸展動作に分かれた。また、多次元尺度構成法では左右の運動が屈曲伸展動作よりも大きく離れていた。これらの結果より、RSA解析を用いることで各運動条件時における脳活動パターンはその類似性に応じて適切に分離されていると考えられる。今後は本年度の解析手法を運動学習時の脳活動パターンに用いることで、運動学習に関わる脳活動パターンを明らかにしていく。これにより、ヒトが新たな運動を学習していくときの脳活動の変化が明らかとなり、運動学習メカニズムの解明に貢献できるものであると考えられる。
3: やや遅れている
これまでの研究で、26年度にはMRI対応ジョイスティックを用いて視覚運動変換課題の運動学習を行っているときの脳活動をfMRI(Siemens Verio, 3テスラ)によって計測を行い、本年度ではそれらの脳活動パターンを解析する手法について検討を行った。しかし、実験で用いたMRI対応ジョイスティックでは、視覚運動変換課題を遂行する上でジョイスティックの形状の非対称性によって被験者が変換を知覚してしまうという問題があることが明らかとなった。そのため、本年度に、対称な形状のジョイスティックを特注で作成したため遅れが生じている。
これまでの研究により複数のボクセルパターンの解析手法も確立され、特注のジョイスティックも完成したので、今後はこれらを用いて研究を進めていく予定である。
すべて 2015
すべて 学会発表 (7件) (うち国際学会 4件)