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2014 年度 実施状況報告書

運動のバラツキを生み出す神経機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 26750242
研究機関早稲田大学

研究代表者

水口 暢章  早稲田大学, スポーツ科学学術院, 助手 (80635425)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワードスポーツ / 運動スキル / 脳機能
研究実績の概要

これまでに、運動の種類や難易度が異なると運動遂行中の脳活動も異なることが報告されている。したがって、運動が異なるとそのバラツキを生み出す神経メカニズムも異なる可能性がある。しかし、これまでに手指を使った比較的単純な運動中の脳活動はよく研究されているが、スポーツのように複雑な全身運動を遂行している最中にどのような脳活動が観察されるかはほとんど明らかになっていない。そこで、今年度は、複雑な全身運動の遂行に関連する脳領域を明らかにすることを目的とした。しかしながら、実際にスポーツ動作を遂行している最中の脳活動を正確に測定することは技術的に難しいため、本研究では実際の運動中と脳活動が類似するとされる運動イメージ中の脳活動を測定した。
本研究では、19人の一般成人を対象に、難易度の異なる3種類の鉄棒を用いた動作をイメージさせた。イメージさせた動作は、行うことが非常に難しい大車輪、難しいけ上がり、簡単な懸垂、であり、これらイメージを行っている最中の脳活動を機能的磁気共鳴画像法で測定した。その結果、すべての動作でイメージ中には補足運動野の活動が有意に高いことが明らかとなった。先行研究により、補足運動野は運動イメージ中に活動することがわかっており、それを支持する結果が得られた。また、最も難しい大車輪のイメージ中の脳活動から最も簡単な懸垂のイメージ中の脳活動を差し引いた結果、最も難しい大車輪のイメージ中には一次視覚野の活動が高いことが明らかとなった。一次視覚野は視覚的なイメージ形成に重要な部位であることから、難しい全身動作をイメージする際には視覚的なイメージを代償的に行う可能性が示された。この結果は、手指のイメージ研究では報告されておらず、それらの動作と複雑な全身動作のイメージ中では異なる脳活動を示す可能性が示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

申請者は本年度より所属先が異動した。異動先の機関では、用いる予定であったMRI室内で行動データを計測する装置が設置されておらず計画の修正を余儀なくされた。従来の計画では、実際のスポーツへの応用を見据え、複数の異なる手指を用いた運動課題中の運動パフォーマンスと脳活動との対応関係を明らかにすることを目標にしていたが、本年度は直接実際のスポーツ動作を対象とすることにした。しかし、実際のスポーツ中の脳活動を測定することは技術的に困難であるため、運動中と類似した脳活動を示すことが知られていて、かつ、行動データの計測装置が必要ない運動イメージを用いた。本年度の研究結果から、手指の動作と複雑な全身動作では異なった脳活動を示す可能性が明らかとなったことは研究成果をスポーツへ応用するにあたって貴重なデータとなった。

今後の研究の推進方策

今後は、非侵襲的脳刺激法を用いて運動パフォーマンスを向上させることができるか否かを検討していく。具体的には、対象とする動作に関連した脳活動を経頭蓋直流電気刺激法にて修飾した後では、そのパフォーマンスが刺激前と比較して異なるかを検討する。
研究を遂行する上での課題として、経頭蓋直流電気刺激法の効果には個人差が大きい(Wiethoff et al. 2014; Lucia et al. 2015)ことが挙げられる。つまり、例え健常な一般若年成人であったとしても、中には刺激効果の見られない人が存在すること報告されている。そのような効果の見られない被験者が実験に参加した場合には、グループ解析を行っても統計的な有意差が見られない可能性がある。したがって、個人差が存在することを考慮しつつ、科学的に信頼のあるデータを得るためには、同じ被験者に同一の実験を複数回行い再現性を確認することが有効であると考えている。

次年度使用額が生じた理由

所属機関の異動による計画変更に伴い、購入予定であった装置の購入を見送ったため、使用額が予定額を下回った。

次年度使用額の使用計画

計画変更に伴い、当初必要であった装置の購入は見送ったが、新たに購入する必要がある装置があるため、その購入に当てる。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2015 2014 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] The effect of somatosensory input on motor imagery depends upon motor imagery capability2015

    • 著者名/発表者名
      Mizuguchi N, Yamagishi T, Nakata H, Kanosue K
    • 雑誌名

      Frontiers in Psychology

      巻: 6 ページ: 104

    • DOI

      10.3389/fpsyg.2015.00104.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Activity of right premotor-parietal regions dependent upon imagined force level: an fMRI study2014

    • 著者名/発表者名
      Mizuguchi N, Nakata H, Kanosue K
    • 雑誌名

      Frontiers in Human Neuroscience

      巻: 8 ページ: 810

    • DOI

      10.3389/fnhum.2014.00810.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Effector-independent brain activity during motor imagery of the upper and lower limbs: an fMRI study2014

    • 著者名/発表者名
      Mizuguchi N, Nakata H, Kanosue K
    • 雑誌名

      Neuroscience Letters

      巻: 581 ページ: 69-74

    • DOI

      10.1016/j.neulet.2014.08.025.

    • 査読あり
  • [学会発表] 運動イメージ中の脳活動はイメージする力レベルに依存する2014

    • 著者名/発表者名
      水口暢章、中田大貴、彼末一之
    • 学会等名
      第27回日本トレーニング科学会大会
    • 発表場所
      独立行政法人産業技術総合研究所臨海副都心センター
    • 年月日
      2014-11-22 – 2014-11-23
  • [学会発表] 運動イメージにおける体性感覚入力の役割2014

    • 著者名/発表者名
      水口暢章、中田大貴、彼末一之
    • 学会等名
      第69回日本体力医学会大会
    • 発表場所
      長崎大学
    • 年月日
      2014-09-19 – 2014-09-21
  • [学会発表] 新規の全身動作学習前後のミラーニューロンシステムの活動2014

    • 著者名/発表者名
      水口暢章、中田大貴、彼末一之
    • 学会等名
      第22回日本運動生理学会大会
    • 発表場所
      川崎医療福祉大学
    • 年月日
      2014-07-19 – 2014-07-20
  • [図書] アンチ・エイジングシリーズ4 進化する運動科学の研究最前線2014

    • 著者名/発表者名
      水口暢章、彼末一之(分担執筆)
    • 総ページ数
      406
    • 出版者
      エヌ・ティー・エス出版
  • [備考] 研究者が所属する研究室のホームページ

    • URL

      http://www.f.waseda.jp/kanosue/

URL: 

公開日: 2016-06-01  

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